虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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ここはなに?
ウェブサイト「虫の居所」の一部です。
管理人ならのが、そのときどきに考えたことや興味を引かれたもの、読んだものなどについて、心のおもむくままに、だらだらと綴るところです。心がおもむかないときは、更新停止しています。
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2017年12月に読んだものメモ
というわけで、今年もありがとうございました。

正直なところを言うと、アクセスログも日頃はほとんど確認しないので、はたしてここを見てくださっている人がいるのかいないのか、さっぱり分かっていないんですけど。そもそも現状、ブログサービスから提供されてるアクセスログで取得できる情報が少なくて。どんな単語で検索されているかとかも、昔は閲覧できたのに、いつのまにか項目が消えてたわ(って、もしかして検索でここにたどり着いている人など誰もいないので必然的に項目が表示されない?)。

しかし自分用の記録としては、ここの読了メモも(基本的にTwitterからの転載とはいえ)それなりに役立っているので、これからも続けていくと思います。ひとさまの参考になるようなことは書けてませんが、たまたまご覧になって「おー、こんな本が存在するのかー」と思ってくださるかたがいたら、ちょっと嬉しい、くらいのスタンスです。


  • Cixin Liu“Death's End (The Three-Body Problem) ”(訳:Ken Liu/Tor Books, 2016年9月/原書:刘慈欣《三体III:死神永生》重庆出版社,2010年11月)
     「三体」シリーズ第3巻。2作目ラストで三体星人とかろうじて対等な関係を成立させることができた地球人サイドだったが、やがてその均衡が崩れて、という完結編。
     今回は主人公とその周辺がとにかく節目節目でコールドスリープに入りまくるため、主要登場人物たちがまだまだアクティブに動ける肉体年齢のままで、物語の舞台となる時代がものすごいびょんびょん飛ぶ。前作の主人公だった羅輯もメンター的な老人として登場(嬉しい)。
     主人公・程心が優秀なのに自己評価低めの内省的な女性で、わりと継続的にうじうじするので、彼女のビジネスパートナー兼親友となっていく女性、艾AAの前向きで豪快なキャラクターに救われる。しかし程心もただうじうじしているんじゃなくて、大いなる責任を引き受けて、信念を曲げることなく権限を行使した結果を常に気にかけている誠実な人で、それが物語の推進力になるし、作品テーマ(たぶん)にもかかわってくる。
     前作では天体間コミュニケーションには絶望しかないのかって感じの理論が展開されたが、完結編ではそれへのカウンターも示され、どんどん壮大なスケールの話になっていって、最終的には素直に大宇宙へのロマンを感じる流れに。


  • 阿部智里『弥栄の烏』(文藝春秋,2017年7月)
     シリーズ6作目。これで第1部完結だそうです。女子高生が主人公でびっくりした前作と同じ時間軸で、同じシーンを八咫烏たち側の視点から書いた部分の比重が大きい。全体像が見えてきていろいろ納得。ただ、私はこのシリーズがハイファンタジーじゃなく現実と地続きだったというのがはっきり見えてきた3作目のあたりから正直微妙にテンションが落ちてるので……。(個人的好みです、すみません。現実と地続きなものがすべて嫌というわけでは決してないのですが、このシリーズに限っては、最初のうち、もっともっと奥行きがある完全な別世界が構築されてると見えてた部分にすごく魅力を感じていたので、現実世界のなかの閉じたスペースだと知った時点でスケールが小さくなったように思って拍子抜けしてしまった)。でも八咫烏たちの生態(?)設定とかはやはり練りこまれていて面白い。

  • Shanna Swendson "Twice Upon a Christmas"(NLA Digital LLC, 2017年11月)
     会社員として収入を確保しながら夜はシンガーとして活動しつつも、だんだん二足のわらじ生活に無理が出てきている主人公。音楽仲間の親友にコイントスで決めちゃえーと言われたけど結局コインの表裏を確認する勇気が持てなかったある晩から、同じ日を2回ずつ繰り返して2つの違う人生を1日交代で送るように……というロマンティックコメディ。最終的にヒロインがどちらの人生(とパートナー)を選びたくなるかなんてもう初っ端から分かりきっている書かれ方なんですが、かるーく読めてクリスマスシーズンのわくわく感もあって楽しい。


  • 荒川弘『百姓貴族』第5巻(新書館,2017年,12月)
     ネタが尽きないですよねえ。それだけ、私たちが普段、農業に従事する人たちの生活や感覚をぜんぜん知らずに食べ物だけ享受して生きてるってことなので恥ずかしくはあるんですけど。それと、子供のうちから家業の労働力としてカウントされてるのを当たり前のこととして描写してるの、サラリーマン家庭で育った身にはすごく眩しく感じる。ホルスタインの登録に昔は斑紋を手描きしてたという話(荒川先生がよそんちの牛まで1頭500円で請け負ってたという)が面白かった。中国旅行エピソードで杜康潤先生が登場人物として出てきたのもちょっとテンション上がった(笑)。

  • 竹宮惠子『風と木の詩』全16巻(初出:小学館,1976年〜1984年)
     電子書籍ストアのebookjapanで、期間限定の全巻無料キャンペーンをやってたので、それで読ませてもらってしまいました。申し訳ないので、これのみタイトルからのリンクを、いつものアマゾンじゃなくそっちにしてます。
     ものすごく有名な古典作品で、いろんなところで引用されたりパロディ化されたりしてるのに、これまで詳しい内容を知らなかった。読んでみると、漠然とイメージしていたよりもはるかに厳しい話で、いまや退廃的な美少年全般を象徴的に表す代名詞として使われることすらある主人公ジルベールは、大人の身勝手によりネグレクトと虐待を受けてきた子供で、その育ちの歪さゆえにさらに他者の歪んだ妄執を引きつけてしまうような性質を帯びていくわけで、その魔性の魅力は必ずしも肯定的には描かれていない。
     この明確な思想性を持った物語を1970年代に少女向けの雑誌で連載していたのかということに、すごい衝撃を受けた。あと、主人公たちと同世代の女性キャラ(パトリシアやアンジェリン)が、この時代背景にあって自分の意思をきちんと持ち、弱さや葛藤を抱えつつも前向きに道を切り開いていく素敵な女の子たちで、この点にも正直、先入観を覆された(BLジャンルの先駆けと言われるようなお話なら、どうせ女性キャラは添え物なんでしょ……と侮っていたことを告白します)。
     電子書籍サイトにあった、竹宮先生ご本人のコメント付き作品背景ガイドも面白かったです(超ネタバレ注意)。デビュー50周年って、ほんとすごいよねえ。



(読了記録はいつも月の最終日に出していますが、今月は1日前倒し。2018年もよろしくお願い申し上げます。)
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2017年11月に読んだものメモ
  • 陳浩基『13・67』(訳:天野健太郎/文藝春秋,2017年9月/原書:陳浩基『13・67』皇冠文化出版,2014年6月)
     香港を舞台にした6つの連作。雨傘革命の直前の2013年から、時間をさかのぼって最終話の舞台は反英暴動が起こっていた1967年。市民を守ることを最優先するという自らの理念に従って時に超組織的な行動をとることも厭わない、優れた洞察力を持つひとりの警察官の、不穏な時勢のなかにあっても後進に志を継いでいく最後の事件から、不穏な時勢にもかかわらずそういう道を歩み始めるきっかけとなったのであろう最初の事件まで。
     ひとつひとつの物語が意外な展開を繰り出してくるミステリとして楽しめると同時に、通して読むと香港の世相の変遷が浮き上がる。最終話で「あ、そういうこと!?」っていう記述があって思わず第1話を読み返した。
     聞き覚えのある固有名詞が多く出てきて、映画で見ている香港警察のイメージで漠然と自然に脳内映像化してたけど、実際に映像化権を取ったのは(なかなか作品が完成しないことに定評がある)王家衛。気長に待とう。


  • 沼田真佑『影裏』(文藝春秋,2017年7月)
     第157回芥川賞受賞作。序盤の釣りに行くくだりの描写がすんなりと目に浮かぶようで美しい。性的志向や震災などの要素が出てくるけど、あくまでもさらりとした扱いで、特別なこととして作中でクローズアップしない姿勢に意思を感じる。主人公にとっては慣れない土地で得た大事な友人だった「日浅」への思い入れの空回り、目の前からいなくなってからそれまで見えていなかった部分が垣間見えてくることによる落胆もまた、主人公のなかでは正面から受け止めらることなく、ただ抑制されながら淡々と次の場所へと流れていく感じ。

  • 辛酸なめ子『おしゃ修行』(双葉社,2017年7月)
     なんかこう、すごく自分とライフスタイルの違う人の生活を垣間見た感。洋服屋の店員さんから繰り出される「ちょっとしたパーティーにも便利ですよ」的なセールストークは、こういう人がターゲットなのか。そしてこの人のスピリチュアル系な発言はどこまで本気なのか。


  • 寝猫『親が終活でしくじりまして』(三五館,2017年7月)
     著者のお母さまが亡くなってからの顛末。タイトルに偽りありなのでは。わりとすんなり揉めごとなく進んだほうだと思うし。むしろ亡くなったご本人の采配により、お葬式などにかかるお金がきっちり保険で下りるようになってて著者が「終活のカガミ!」と感謝する場面があるくらいだし。そして最終的には、やり残したことがあっても、あれやろうこれやろうと楽しみにわくわくしていた時間は幸せだったよね、残念な人生なんてことないよねっていう流れになっていくので、ほんと、ぜんぜんしくじってない。なんなんだこのタイトル。



 フィギュアスケートシーズンが盛り上がり始めたり、オンライン小説を延々あさってしまったり、読み始めた本がたしかに面白いのになんか少しずつしか読めなかったりしていたので、読了記録に入れられたものは少ないです。
Posted at 18:49 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
2017年10月に読んだものメモ
  • 鴇澤亜妃子『宝石鳥』(東京創元社,2017年8月)
     最初はそれぞれ関係がないように見えた人たちが、とある儀式の場に向かって集結し、つながっていくまでの過程がまったく予想できなくてわくわくした。タイトルにもなっている宝石鳥という存在やその伝説が生きる神秘的な島のエキゾチックな文化の描写がとても美しい。第2回創元ファンタジイ新人賞受賞作。

  • キャスリーン・フリン『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(訳:村井理子/きこ書房,2017年2月/原書:Katherine Flinn "The Kitchen Counter Cooking School: How a Few Simple Lessons Transformed Nine Culinary Novices into Fearless Cooks" Viking Penguin, 2011)
     いろんな事情で料理という作業を身近に感じられないまま大人になった女性たちを集めて基本的な考え方のところから教えていくというプロジェクトの経過を綴ったノンフィクション。
     自信がなく調理に手を出せず出来合いのものに頼っていた生徒たちが、どんどん厨房に居場所を見つけ、食材や調味料の質を気にする「意識の高い」料理人になっていく。ただし、それぞれ自分が無理なくできる範囲で。必要なのは、ちょっとした後押しだったんだね……という、すごく「いい話」。
     読みながらアメリカと日本では、かなり状況が違うだろうな、というようなこともつらつら考えていた。そもそも日本だと、TVディナー売ってないしなあ。冷蔵庫小さいしなあ。小学校から男女ともに家庭科の授業があるのも、たぶん大きいよね。
     個人的には、「料理ができない女性=ダメ女」みたいに取れちゃう邦題がちょっと意地悪だな、と思いました。原題には "Culinary Novices(料理初心者)" という表現しかないし、ここに出てくる人たちは料理にエネルギー割いてこなかっただけで、そのほかの分野ではすごくがんばって生きてきたということがちゃんと語られていて、著者もぜんぜんダメ女なんてこと思ってない(だからこそ、生徒たちも素直にレクチャー受けることができてる)。翻訳書のタイトルは出版社側に権限があると伝え聞くので、翻訳者のかたには責任ないとは思いますが。
     あと、これも個人的な好みの問題なんですが、文章が途中で頻繁に太字になって強調されているのが、かえって気が散る感じで、少なくとも私にとっては読みづらかったです。電子書籍の英語版サンプルを確認したところ、原文ではそういうフォントいじりみたいなことはしてなくて、引っかからずにするっと読める。本当はそんな小細工なしでも文脈でじゅうぶんに伝わっている「ここが注目すべき面白いところですよ」っていうのを、わざわざ教えてあげなくちゃと出版社側に思われるくらい、日本語の読者が信頼されてない?
     まあそれはそれとして基本的には登場人物たち全員に肩入れしながら温かい気持ちで読みました。


  • 北大路公子『私のことはほっといてください』(PHP文芸文庫,2017年7月)
     基本的に日常エッセイ集なんだけど、ときおり言葉がぽーんと予想外の空想側に寄っていってずんずん進んでいく疾走感、ふっと力を抜いて可笑しみをかもしだすタイミング、すべてが心地よく、無意識の領域に達した熟練のわざって気がする。

  • 春日武彦『鬱屈精神科医、お祓いを試みる』(太田出版,2017年7月)
     前作『鬱屈精神科医、占いにすがる』の続きといえば続きなのだけれど、全体を通して、相続したマンションを大幅に改築してそこで暮らし始めるという話を中心に展開している感があるので、構成的に前よりもすっきりした印象を受ける。私小説とエッセイの狭間というか、立派な功績もあるお医者さまがよくぞここまでさらけ出してと思ってしまうような赤裸々な内面の吐露であると同時に、すごく周到に演出もされているような筆致。前作と同じく、ところどころにハッとするような鮮烈な情景描写があって、それは大事件でも超常現象でもなんでもない、日々のなかのひとこまなんだけど、そこに強い情動が発揮されるという点に、なぜだか深い共感を喚起される。
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2017年9月に読んだものメモ
  • 温又柔『真ん中の子どもたち』(集英社,2017年7月)
     第157回芥川賞候補作でした。同著者のエッセイ集『台湾生まれ 日本語育ち』はとても面白かったです。事前に見た作品紹介文では、類似するテーマを扱っているようだったので、フィクションとしてはどう料理するのだろうという興味がありました。
     ルーツの半分または全部が台湾や中国にありながら日本で育ち母語は日本語な3人がメインの、中国への短期留学中でのできごと。エッセイで読んだ話とも共通する要素がありつつ、未熟さの残る若者たちがとてもいじらしくかわいらしく青春小説としてさわやか。もともと仲良しだった咪咪(ミーミー)と玲玲(リンリン)の女の子ふたりが留学先で出会う舜哉という男の子の、とらえどころがないようで芯は通っている感じが魅力的。
     ただ、主題的な部分での心の揺さぶられ度は、どうしてもエッセイのほうがファーストインパクトだったこともあって強烈だったなーと、少し寂しく感じてしまったりも。でも将来的に、きっとフィクションならではの強みを活かしてうならせてくれるような新たな作品も読めるんじゃないかなーとか勝手な期待も湧いてきたり。
     あと、芥川賞選考委員のひとりが「日本人の読み手にとっては対岸の火事」と評して話題になった件については、そんな、日本人は日本人にとって身近な話題しか読めないみたいなこと言われても困るわとしか。直接関わりのないテーマに読者を引き込む力の有無ではなく、テーマの選択そのものをマイナス評価するのは納得いかない。この選考委員の昔の作品でめっちゃ好きなやついくつかあって、とても気持ちが複雑。


  • 星野博美『今日はヒョウ柄を着る日』(岩波書店,2017年7月)
     この著者の本を読むのは久々だったので、いまは戸越銀座でご両親と一緒に暮らしているんだなってことも初めて知った。親や自分が歳を重ねていくこと、そのなかで過去に思いを馳せること、目の前のことに観察眼を発揮すること、他人が敢えて突っ込まない部分にこだわっていくこと、などについて、ぼんやりと自分のことも連想しつつ読んでいた。戸越銀座の町のイメージがもうちょっと自分に備わっていればよかったと残念に思った。

  • Shanna Swendson "Criminal Enchantment (Enchanted Universe)" (NLA Digital LLC, 2017年8月)
     <(株)魔法製作所> シリーズの、ガーゴイルのサムを語り手とする番外編、第2弾。今回は、ケイティがまだMSIに入社してない頃の話。街に出回って悪用されている怪しくも微妙にヘボいまじないの出どころを突き止めるため、サムがオーウェンと一緒にがんばる。その過程で、なにやら魔法がぜんぜん効かないっぽい、明らかに地元民じゃない若いお嬢さんを見かけたんだけど……? というわけで、本編第1巻冒頭につづくわけですね。いろいろと、にまにまできて楽しい。

  • 佐藤正午『月の満ち欠け』(岩波書店,2017年4月)
     表面をなぞれば純愛ものとも言えるんだけど、筆致がホラー寄りのような。発端となる関係が決して世紀の大恋愛的なものではない書かれ方なのもあり、そこから超常現象にまで至る感情の強さとのコントラストに恐ろしさを感じさせる。また状況的にも手放しハッピーエンドにはなりようがないので、一貫してすごく不穏な雰囲気が漂う。さらに最初の視点人物が新たに認識した現象を素直に受け入れるか、それとも常識の範疇に押し込めるかは、彼の自由なんだけど、可能性を示唆されてしまえば意識せざるを得ないので、今後の彼の人生も地獄っぽい。そういった堂々巡りの当事者たちが、みんな一見して特殊な運命をたどるようなふうではない、地味に日常生活を送る平凡な人物として描写されているところに怖さが際立つ。第157回直木賞受賞作。

  • 三浦しをん『ぐるぐる♡博物館』(実業之日本社,2017年6月)
     全国のいろんな博物館を訪問して学芸員さんなどのお話も聞いてレポートしてくれてる。三浦さんは、初心者・素人視点での取材本を何冊も出していらっしゃるけど、いつも楽しくユーモラスな表現と、取材対象への敬意や配慮が両立されていて感心する。今回は、よく話題になってるのを見かける有名どころから「そんなテーマの博物館が存在するのか!」みたいなところまで全部で10館が紹介されてるけど、期待を裏切らず、どれも分かりやすく面白くまとめてくれてる。三浦さんご自身が、知らなかったことについて突っ込んだところまできちんと知ろうとする意欲がすごく強いかたなんだろう。自分もそうありたいけど、常日頃いろいろ見逃しがちなのを反省。特に、大阪から東京に移転する予定らしい「ボタンの博物館」は、完全予約制みたいなのでふらっと気軽に立ち寄ることはできないけど、再オープンしたらぜひ行ってみたい。

  • 北大路公子『流されるにもホドがある キミコ流行漂流記』(実業之日本社文庫,2017年6月)
     世間の流行にまったく興味のない著者が流行をテーマに書くというコンセプトのウェブ連載をまとめたもの。第1回冒頭の、流行とは深い水底に座っていると頭上の水面近くをキラキラしながらさっとよぎっていく影、みたいな比喩があまりにも「まさしく!」って感じで素晴らしく、一気に心をつかまれた。そんな北大路さんなので、最初のうちはせっかく買った高機能な体重計を使わなかったり『アナ雪』未見のまま憶測で1本書き上げてしまったりと期待を裏切らない距離の置き方なんだけど、やがてちゃんと北陸へカニを食べに行ったりポケモンを集めたりし始めるので、なんだアグレッシブじゃん! 流行追えてるじゃん! とちょっぴり裏切られたような気持ちになりつつ、やっぱり追えてない部分についてはありがとうありがとうとも思うのだった。


  • よしながふみ『きのう何食べた?』第13巻(講談社,2017年9月)
     山田さんは筧先生への新レシピ提供元レギュラーとして定着したのか。3月の、合同お誕生日メニューは、雛祭りっぽくもある。ついにふたりとも50代。変わらないようで、初期の単行本を改めて見ると、絵柄のうえでもちゃんと歳をとっているのすごい。
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2017年8月に読んだものメモ
  • 東山彰良『僕が殺した人と僕を殺した人』(文藝春秋,2017年5月)
     台湾の布袋劇が出てくるみたいだよっていう予備知識を得て軽い気持ちで手に取りましたが、なにかもう、なにかもう!!(興奮)それぞれ過酷な家庭環境にありながらもせいいっぱい生きてる3人の少年たちが、少年らしい一途さでエクストリームな計画を立ててしまうところから歯車が狂って、一緒に大人になることはできなくて。やるせなさで胸がいっぱいになった。不穏な空気を孕みながらも成長していく少年たちの日々がすごく生き生きしていて、大人になってからの話がしんどくて。でも読後感はむしろどこかさわやか。とにかくよかった。

  • 住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉文庫,2017年4月/親本:2015年6月)
     若者のあいだで流行ってる本なんでしょ、とスルーしてきたが、最近になって(文庫化したから?)、けっこう大人のひとも読んでるなー、しかも評価されてるなーというのが目につくようになって、興味が湧きました。面白かったです。わりと分かりやすい、メッセージ性のある前向きな結末に至る物語で好感持てる。ただそれだけに、その普通に健やかで若者らしい結論を主人公が得るために、わざわざ女子高生が死ぬ必要はあるのか……みたいなもどかしさがあることも否定できない。それを言ったらドラマを作ることの意義がなくなるのかもしれないけど。
     まあ、このへんの「人死に」を誰かの成長のための機会として爽やかに描くことへの拒否感は、私自身が若い頃、人付き合いのうえで「お母さんを早くに亡くしたから人間ができている」的なお言葉をもらって内心「うるせえ、ママンが生きてたとしても俺は俺だ」とイラついていた経緯があるという個人的な病理かもしれず(そして、そういうイラつき方をしている時点で、まったく人間ができてなどいなかった)。


  • 柚木麻子『BUTTER』(新潮社,2017年4月)
     第157回直木賞候補作でした。なんというか、タイトルどおりすごくこってりとした、胸焼けするような描写の連続。がんじがらめになって息苦しい感じ、自分が否定する立場の存在に惹きつけられ、からめとられる感じ、理不尽への怒り、もどかしさが一丸となって胸中に去来する。でも一方で、追い詰められた主人公が底力を見せて風穴を開いてくれるので、絶望せずに読了できた。ただ、メタなことを言うと、まだ事件が記憶に新しい、実在の犯罪容疑者をモデルにしていることが明白な登場人物の内面を、作品のテーマに恣意的に沿わせてすごく深いところまでえぐるように推し量るので、そのこと自体が私自身の倫理的感覚とは拮抗していて、フィクションとしては読んでてかなり居心地が悪い面も。三十年後くらいには心穏やかに再読できるかも(心穏やかであっては意味がないのかもしれないが)。

  • 萩尾望都『ピアリス』(河出書房新社,2017年7月/初出:『The Sneaker Special』1994年〜1995年,角川書店,木下司名義)
     巻末に、初出時に別名義で小説として出ることになった事情についても語られているインタビュー収録。たぶんこれ、たとえ萩尾さんご自身の挿絵がついてなくても(ついてるんだけど)、読んでてすごく萩尾さんがお作りになりそうな物語だと感じたに違いないと思う。文章もやっぱり、視覚情報を重視する筆致になってる気がして、あくまでも「絵」のかたなんだろう、とも。あと、連載途中で雑誌が廃刊になったために、物語も途中でぶった切られてしまっており、萩尾さんご本人はもうこの続きを書く気はないとのことなので、ぽーんと放り出された気持ち。でも故郷の星を追われ逆境のなかにある子供たちの行く末については、各自が想像するしかないんでしょう。


  • 杜康潤『孔明のヨメ。』第7巻(芳文社,2017年7月)
     徐庶兄さんがんばる。それぞれの人が、それぞれの立場で、守るべきものを守ろうとしているさまが同時進行。権力や武力の運営には知力が不可欠なんだよなーと実感させてくるエピソードが多い。この巻で羽扇が初登場。本作の孔明のキャラに似つかわしい出し方。

  • 荒川弘『銀の匙 Silver Spoon』第14巻(小学館,2017年8月)
     私は、初めて登場したときからずっとずーっと相川くんを応援しつづけているのですが、まだまだ応援しなくてはならないようだな! 彼は頑張ってますよ! どんどん卒業が視野に入ってきてて、みんなの将来が決まっていくんだなーと思うとどきどきする。八軒くんには報われておめでとう&新たな試練。それぞれの登場人物が、もともとのキャラをしっかり保ちつつ、はっきりと以前より成長はしているのが説得力をもって描かれていて眩しい。しかしやはりこれ、卒業したあたりでお話は終わってしまうのかなあ?
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