虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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2017年1月に読んだものメモ
  • Shanna Swendson "Paint the Town Red (Enchanted Universe Book 1) " (NLA Digital LLC, 2016年12月)
     「(株)魔法製作所」シリーズのスピンオフ短編。電子書籍で無料配布中でした。MSIのセキュリティ担当、ガーゴイルのサムによる一人称で、ケイティのミッションを支援してないときのお仕事中のひとこま。なかなかハードボイルドな語り口。

  • 新井素子『星へ行く船』(出版芸術社,2016年9月/親本:集英社文庫コバルト・シリーズ,1981年)
     改訂版。巻末に猫のバタカップがどうやってあゆみちゃんに飼われるようになったかが判明する書き下ろし短編あり。この短編はシリーズ最後までの展開を知ってる人だと「ああ、なるほど」って思うやつですね。宇宙移住が実現している未来の話なのに、いろんな価値観とかがやっぱり「昭和」だよなって思う部分が目について、なんだかメタっぽい読み方をしてしまった。コバルトで読んでた頃のこととかも思い出されて懐かしい。

  • 植本一子『かなわない』(タバブックス,2016年2月)
     写真家の日記その他(主にブログ再録)。ご夫君はミュージシャンで、小さいお子さんふたり。日々の暮らしのこまごまとした話の率直で繊細な描写に共感するところと、芸術家夫婦だからか知らんけど破天荒だなーと感じるとこと。しかし切実さも伝わる。特に途中からは終盤にかけて予想外の展開になっていって、ここまで公開しちゃって大丈夫なのかと心配になるほどなんですが、奇妙な迫力で読ませる。今月末発売の新刊の試し読みページを見てみると、また大変なことになってるみたいで。

  • 温又柔『台湾生まれ 日本語育ち』(白水社,2016年1月)
     最も自在に使えるのは日本語だけど法的な日本での立場は外国人で、大きくなってから学校で中国語(普通话)を習い、ご両親は台湾語(閩南語)と中国語(台湾國語)を混ぜて話し、しかしお祖父さんお祖母さんは歴史的経緯の結果として日本語が堪能という複雑な言語環境にいる著者が、国や言語について突き詰めて考察していくエッセイ。さまざまな葛藤を乗り越えてのものだというのは踏まえつつ、軽やかかつ柔軟にボーダーラインを越えて自分だけの言語を獲得している感じがちょっと羨ましい。私はちっちゃい頃、日本語のなかに英単語が混じると、ものっすごい叱られたんですけど、どうせ日本で暮らし始めたら日本語環境に染まるんだから、ママンは当時あんなしつこく怒ることなかったんでは? って思ってしまった(そこかよ)。複数の言語の表記の仕方が面白い。同じひとまとまりの文章のなかでも、著者が学校で習った中国語を活用して話す場面でのセリフは簡体字なのに対して、(おそらく)台湾人である自分を意識しての中国語での発話は繁体字で書かれていたり。ピンインや、台湾語をあらわすときにはカタカナも駆使される。それらが功を奏して、すごく場面を想像しやすい。


  • 井上純一『中国嫁日記』第6巻(KADOKAWA,2016年12月)
     ブログ再録と描き下ろしの進みがそろってないので、時系列面で少し混乱(5巻で決裂した人と仲良し)。今回の描き下ろしはつらいお話だけど、男性側視点で描かれたものはあまりないのでは。作者のお母さんが泣きながらも冷静におっしゃった言葉に重みがある。

  • モンズースー『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした』(KADOKAWA,2016年5月)
     ブログで連載されてたエッセイ漫画の書籍化(書き下ろしもあり)。あまりにも周囲と足並みがそろわない子育て上での不安、わけが分からないことによる絶望と、一方で揺るぎないお子さんへの愛情、お子さんに療育が必要と判明しご自分にも診断が下って対処の道筋が見えてきたときの心の動きなど、かわいい絵柄で正直に吐露されている。主観的な語りだけど門外漢にも伝わるよう分かりやすく整理されており、作中でおおやけにすることとしないことの線引きも一貫していて、著者はとても聡明なかたなのだと思った。

  • あしべゆうほ『クリスタル☆ドラゴン』第27巻(秋田書店,2016年9月)
     去年出てたのいまごろ知って慌てて買った。冷徹な戦士として登場したはずのグリフィスが、旅の過程でじわじわと本当に人間味のあるひとになったねえ。でもこの巻の冒頭で、たぶんずっと未来のことが少し言及されていて、なんだか寂寥感。とにかく、26巻を読んだときにも似たような感慨を覚えたけど、1980年代からずっと読んでいるお話が、ファンも諦めていた中断期間を経て、いま「終わらせよう」という明確な意思を感じさせるように動いているということ自体に、感謝の念がある。
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2016年11月〜12月に読んだものメモ
2017年もよろしくお願いします。


  • 阿部智里『玉依姫』(文藝春秋,2016年7月)
     シリーズ5作目は女子高生が主人公。3作目あたりから純粋な異世界ファンタジーではないという示唆はあったけど、いきなりここまで飛ぶか、と面食らった。広いと思っていた世界が実質「箱庭」のようなものだと確定して、趣向としては面白いけど、少し寂しい気も。一方で謎解きやどんでん返しは楽しめた。若宮殿下って普通にこっち側の人間と意思疎通できるこっち側準拠の常識と語彙があったんだなー(主人公と会話する彼の口から「心筋梗塞」という単語が出たのがなんかそこはかとなく衝撃だった)。前作までのストーリーから本作はいったん離脱して、番外的に世界設定そのものを提示している感じ。来年出る次の巻では八咫烏たちが住まう山内の世界に戻ってこれまでのあれこれに決着をつけて第1部完結ということみたいなので、とにかくそこまでは見届けたい。

  • 松田青子『ロマンティックあげない』(新潮社,2016年4月)
     2013年から2015年までデジタル雑誌『yomyom pocket』に連載されていたエッセイ集。小説作品のどこか浮世離れした印象とは違って、同じ世界に生きてる人だなあって感じ。普通にネットと生活が不可分な感じとかアンテナに引っかかる話題とかに、おこがましいかもだけど親近感があったり。

  • 岸本葉子『週末介護』(晶文社,2016年7月)
     90歳で亡くなったお父さんを5年にわたってきょうだい3人で介護していたときのお話。みんなが通える場所に新たにマンションを購入できて、ある程度は負担を分散できたり、認知症が出てからも比較的穏やかな性格のお父さんだったりという恵まれた条件であっても、やはり介護は大変なのだということがひしひしと伝わってきた。女性の肩に全部かかってくるような介護体験記をよく見かけるので、岸本さんのお兄さんがすごく能動的に関わっていることに感心。本当はわざわざ感心すべきところじゃないのかもしれないんだけど。あと、ちょっとしたミスが命にかかわるかもしれない緊張状態が続く日々のなかでフィギュアスケートをテレビやネットで観戦するのにハマったという話が突然出てきて、テレビ放映に対して注文をつけてらっしゃる内容が、いちいち「ですよね」って感じでした(笑)。介護をしていくなかで湧いてくるマイナスな感情も正直に吐露してらっしゃるのに、読んでてあまり嫌な印象がないのは、この著者の人徳と文章力が大きいなあって思いました。決して能天気なわけじゃないんだけど、根底にポジティブさがあるというか。

  • Shanna Swendson "Frogs and Kisses (Enchanted, Inc. Book 8)"(NLA Digital LLC,2016年12月)
     「(株)魔法製作所」シリーズ8冊目。ついに主役たちが結婚式の相談をするところまで進展しているというのに、またまたややこしいミッションが。ところで、今回は序文で、現実では1作目の出版から10年経ってるけど作中世界では最初のエピソードから1年ちょっとしか経ってませんということが改めて明言されており、なるほどスマホが普及してないよ。そのへんはきちんと考慮するんですね。ケイティが所属するMSIとは対照的な社風のライバル会社のようすが詳しく出てきて、しかも業務内容そのものの黒さを度外視すれば待遇的にはかなりのホワイト企業だったりする皮肉。黒幕の正体はまさかのあの人だけど、まあMSIのトップがあの人なら、ねえ?


  • 小西紀行『映画妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』(小学館,2016年12月)
     今年も映画館に行く勇気はないけどコミックで読んだよ。一度は夢をつぶされ闇に囚われた子にも、本人が気付かぬまま献身的に慕ってくれる妖怪が憑いていて、やがて自力で立ち直って前向きになっていくという王道ストーリー。ちびっこたちがこういうのからメッセージをストレートに受け止めているのならなんかホッとするかも。空を泳いでいくクジラのイメージや、お馴染みの妖怪たちのかけあいのテンポも楽しい。あと、今回の映画では映像がアニメと実写のあいだで切り替わるということだったので、そのへんを漫画版でどう処理するのかと思ったら……小西先生のご苦労が偲ばれる(涙)。小西先生が描くケータくんは、アニメ版よりもかなりまっすぐな少年漫画らしい心根があるけど、どちらにもそれぞれの可愛さがあるよね。

  • 柴本翔『妖怪ウォッチ コマさん〜たまきと流れ星のともだち〜』(小学館,2016年12月)
     青年誌連載の「妖怪ウォッチ」スピンオフ第2弾。大人向けレーベルだけど、今回コマさんと友達になるのは、威勢のいいちっちゃな女の子。彼女が置かれた状況が読者に、そして彼女本人にも徐々に理解されてくるにつれ、やるせなく激しい気持ちに揺り動かされる。前作でのせつなさは、主人公の個人的な事情を中心に回っていたけど、今回はさらに世界が広がっている。そんななかでも、あくまでもまっすぐ純粋に友達を思うコマさんののほほんとした健気さが救いになる。




ところで2016年は後半に入ってから、私にしては珍しくというか、大人になってから初めてじゃない? ってくらい、テレビ放映している続きもののフィクション作品をコンスタントに追っていたのだ。7月から、台湾・日本コラボの伝統人形劇『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』、9月から全54話の中国時代劇『琅琊榜(ろうやぼう)―麒麟の才子、風雲起こす―』、10月からフィギュアスケートのアニメ『ユーリ!!! on ICE』を観ていたよ。

しかしおかげで一時期、私の日常にはたしかにフィクションが必要だが、それは絶対的に活字でなくてもよいのでは、みたいな感じになってしまったのはちょっとびっくりした。うん、ちゃんと数えてないんですけどね、読了した本、例年より減ってると思います……。さて来年はどうなる!?
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2016年10月に読んだものメモ
  • ヘスター・ブラウン『逃げ出したプリンセス〈上〉』
  • ヘスター・ブラウン『逃げ出したプリンセス〈下〉』(訳:今泉敦子/創元推理文庫,2016年2月/原書:Hester Brown "The Runaway Princess" Havercroft Ltd., 2013)
     偶然出会った欧州小国のプリンスと、英国田舎出身のガーデナー。奇跡のように意気投合してすぐに相思相愛、ロマンチックなプロポーズで迷いなく婚約、しかし……。
     婚約後の「しかし」の部分がシビアにリアルに。いまのネット社会ならそうなるよねー、というようなこともたくさん。家族や仕事への影響も多大。しかもプリンスとそれをめぐってすれ違いまで。ヒロインの本業に対する姿勢と情熱の描写がとてもよかったので、このくだりは胸が痛む。主役ふたりがすごい良識派かつ穏健派なので安心感はあるのだが、意地悪してきた相手が作中で報いを受けることもなく、むしろ欲しいもの与えて喜ばせて「はいはい」とスルーして終わったのはなかなか新鮮かも(そしてここで「え? それだけ?」と思った私は性格が悪いかも)。本来社交的なタイプでなくていちいちあわあわする主人公のキャラには好感と共感。


  • 小前亮『天下一統 始皇帝の永遠』(講談社,2016年8月)
     秦の始皇帝の生涯を小説形式で。聡明な素質はありながら人質の子として自己評価低く育ち呂不韋の導くまま王位につくが、やがて李斯と出会って自ら政治を動かすことに興味を持っていくという流れで内面含めて描写して、天下統一までの過程を重点的に。登場人物の性格設定が明解で話が整理されているので分かりやすい。序章で死期の近づいた晩年の始皇帝を出したあと幼年期から語りはじめ、天下を取ったあとの不老不死に執着する段階を経て、残るものと残らないものへの言及につなげる構成もすっきりしている。

  • 川瀬七緒『女學生奇譚』(徳間書店,2016年6月)
     いわくつきらしい古本の取材を依頼されたフリーライター。犯罪の匂いがする本の内容、現実とのリンク、主人公の特殊事情などが絡み合って、やがて追っていた謎とはさらに別の枠組みが現れる。作中作自体も面白い。振り回された主人公たちの今後を応援したくなった。

  • 中島京子『彼女に関する十二章』(中央公論社,2016年4月)
     50歳の女性の平凡なようで案外と驚きに満ちた日々のできごと。可愛げとたのもしさをかもし出せるこういう人いいなあ。作中で引用される伊藤整の随筆の真摯なレビューにもなっている。夫婦のときにかみ合わないが最終的に長年の連れ添いを感じさせる会話もよい。

  • 山口恵以子『恋するハンバーグ 佃はじめ食堂』(角川春樹事務所,2016年7月)
     去年出た『食堂のおばちゃん』の舞台だったお店の、一世代前のお話。大手ホテルに勤めていた先代(前作ではすでに故人)が仕切っているのでメニューもだいぶ前作と違う。本格フレンチにこだわっていた店主が、妻や地元のお客さんたちの意見を聞いて「白いご飯に合う洋食」にシフトしていくくだりや、修行時代の仲間が大きな賞をとって国際的にシェフとして認められていくくだりはちょっと切なかったけど、店主本人はすっぱり前を向いているし、とにかく出てくるお料理がすごく美味しそう。本作のヒロインが、前作のあのたのもしいお姑さんになって、本作ではまだ小学生の息子くんが、前作のヒロインと結婚するんだなー……とか、のちのちのことを考えながら読めるのも楽しい。

  • 浅野里沙子『藍の雨 蒐集者たち』(ポプラ社,2016年8月)
     実力あるジュエリーデザイナーで、骨董商だった父の跡継ぎとしても仕込まれており、さらには元ミス・ユニバースという、「どんだけ」的な高スペック主人公が家事万能な男性秘書とともにクールに生活しながらさまざまな場面で出くわす犯罪の裏を推理。登場する美しいジュエリーや古美術品などの描写がとても詳細で鮮やかに浮かぶのが楽しい。連作短編集だけど、主人公父の死のいきさつという、最初のエピソードで大前提として出された最大の謎が最終話まで解かれないままだったので、今後シリーズ化するのかな。

  • ミュリエル・スパーク『あなたの自伝、お書きします』(訳:木村政則/河出書房新社,2016年7月/原書:Muriel Spark "Loitering with Intent" 1981)
     20世紀半ばのロンドンで、自伝協会なる怪しげな団体と関わりを持った、作家を目指す女性が、自分の未発表作品を現実が模倣しているかのような奇妙な事態と、デビュー作出版に対する執拗な妨害を乗り越えていく。アクの強い登場人物が次々と出てきて、主人公が書いている小説とリンクした言動をとり始め、事実として書かれたものも虚構と入れ替わりうるのだと提示されていくさまは悪夢っぽくさえあるが、全体の筆致はむしろユーモラスで引き込まれる。

  • 宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋,2015年9月)
     今年(第13回)の本屋大賞作品。新米ピアノ調律師のお話。音楽的には決して恵まれた環境では育っていない彼が、こつこつとピアノに向き合い、先輩調律師たちのそれぞれのスタイルの違いに触れながら感覚を研ぎ澄ませて自分なりに解釈していく音の描写が繊細で、作品全体にどこか世俗を離れたような雰囲気も。


  • Thunderbolt Fantasy Project『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 アンソロジー』(KADOKAWA ビーズログコミックス,2016年10月)
     9月末まで放送していた日本・台湾コラボの伝統人形劇から派生したコミックアンソロジー。本編最終回のネタバレがあるので注意。旅の道中や敵方の日常など、軽い感じで読める短いお話が11個。お泊り会にテンション上がる殺無生とか、ちょっと噴いてしまった。どれも絵がきれいで楽しい。個人的には、本編では出番6分だった丹衡兄上が丹翡ちゃんの回想や夢で登場する作品が複数あって嬉しかった。一人称が「俺」になってた作品には少し驚いた。人生で最高最悪にテンパッてた瞬間にもあんな古式ゆかしい口調で啖呵を切った兄上が妹の前では「俺」を使うという発想はなかった。でもこれはこれで萌える。
    〔執筆陣・敬称略:高山しのぶ(カバーイラスト)・岩崎美奈子(口絵イラスト)・秋月壱葉・餅岡望・海月孝・菊野郎・桧村タキ・甲斐・柳ゆき助・篁アンナ・林マキ・平未夜〕


  • 中村光『聖☆おにいさん』第13巻(講談社,2016年10月)
     私が贔屓しているルシファーが名前しか出てこなかったが、相変わらず堕天使のくせに面倒見がよくてほんわか。次の巻ではぜひまた直接の再登場を。ブッダの母とイエスの母が互いへのコンプレックスを乗り越えママ友になれてよかった(息子たち的には大変なのか)。

  • よしながふみ『きのう何食べた?』第12巻(講談社,2016年10月)
     登場人物の時間が容赦なく進んでいくぞ。そこが面白さではあるんだけど。最後に出てくる新しい事務員さん好感度高いな! 末永く居ついてほしい。さつまいもご飯、子供の頃に亡母が作ってくれてたのに、これ読むまで忘れてた。今度やってみる。

  • 細川貂々『それでも母が大好きです』(朝日新聞出版,2016年5月)
     いつも以上にシンプルな絵柄で、亡くなったお母さんとの関係を分析した作品。これまでの夫婦や子育てについての作品と違って、故人である当事者の了承を得られていないというのもあるんだろうけど、実話としてではなく架空のキャラに託して語らねばならなかったこと、お母さんの呪縛に気付いて逃れるところで話が終わっており、そこからタイトルにつながる具体的描写がいっさい出てこないことに、現在進行形の生々しさを感じる。実際にはもう、ここに描かれているところからさらに状況は前に進んでいるのかもしれないのだけれど。
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2016年9月に読んだものメモ
  • 新井素子『ダイエット物語……ただし猫』(中央公論社,2016年7月)
     表題作のほか人間の健康問題を扱ったお話も2つ入ってます。「大腸ポリープ物語」はウェブで一度読んでいたが、補足あり。新作なのにとても懐かしいこの感じ、この締めのフレーズ。ご夫妻と猫さんたちがいつまでもお元気でいらっしゃいますように。

  • ジェーン・スー『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(文藝春秋,2016年5月)
     世間的イメージの「女性」と自身との乖離を強く意識しつつ、いろいろ模索したり分析したり世界が広がったりそうでもなかったりを率直に。世間の動向を意識しているだけでも、偉いなあ、みたいな感想……。でも自分の感覚とは遠い部分もありつつ、漠然と感じていたことが具体的に言語化されていたりもして面白かった。

  • 妹尾ゆふ子『翼の帰る処 5 蒼穹の果てへ〈上〉』(幻冬舎,2015年3月)
     そろそろ下巻が出るみたいなので、いまならすごい引きで終わってても数日待てば大丈夫! と去年発売直後に買った本を出してきました(結局は予約していたネット書店からの発送が遅れて発売日からさらに数日待つことになったんですけどね)。皇女の宣言でヤエト先生が驚いていて「あれ?」ってなった。私の頭の中では、もうとっくに「この姫さま、天下取りにいくよね、先生も承知してるよね」みたいな気持ちになってた(笑)。「罅」をふさいでしまったあとの世界は、ずいぶんと様相が変わってしまうのだろうか。いよいよ大詰め。

  • 妹尾ゆふ子『翼の帰る処 5 蒼穹の果てへ〈下〉』(幻冬舎,2016年9月)
     シリーズ完結。いろいろ同時進行してるなかで、どれかの要素はオープンエンディングにするんだろうなあと思ってたけど、そう来たかー。そして「罅」はそういうことに。上巻を読み終えた時点では、これどうやってあと1冊で終わるんだろうと思っていたけど、私の凡庸な各種予想をさらっと裏切ってくれつつ見事にきれいなかたちでまとまりました。1冊目から8年も経っていたとは驚き(月日が経つのは早いねえ)。シリーズ全体を通して、シリアスな展開が続くなかでも視点人物であるヤエトの生真面目な一方で切羽詰るとヤケクソ気味にユーモラスにもなってくる語り口が、全体のトーンを軽くしつつ物語の重厚さをも損なわずにいて、とても独特かつ魅力的であったと思います。

  • 葉真中顕『ブラック・ドッグ』(講談社,2016年6月)
     動物の権利を訴える過激団体によるテロに見舞われたイベント会場。パニックを数人の視点から多角的に。さまざまな観点から、人間とは、ヒトとは、どこまでも矛盾をはらむ存在よなあ、という内容に。どこまでその矛盾を内包しつつ未来へと進んでゆけるのか。


  • 佐久間結衣『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』第1巻(原案:虚淵玄/講談社,2016年9月)
     同タイトルの日台コラボ伝統人形劇のコミカライズ版。敵の陣営の印象がだいぶ違う。人形劇のほうは、人形の美麗さ可愛さが顕著なのと、尺の関係か一般人に悪さをしたりするシーンがないので、ともすればうっかり肩入れしてしまいかねない感じなんですが、コミック版ではしっかり悪の組織だった。基本的に絵柄があっさり系なので、本来は美形のキャラも正直あまり美形には見えないのですが、人形であることを差し引いてもずっとすまし顔イメージだった凜雪鴉のきょとんとした表情とかはなんかかわいい。
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2016年7月〜8月に読んだものメモ
なんかこの夏はあんまり本読みモードじゃなかったです。

  • 山口恵以子『早春賦』(幻冬舎,2015年11月)
     明治維新後に成り上がった実業家の娘が公家華族に嫁いだものの、典雅をよしとする家風のなかで疎外され、夢見た結婚生活とはほど遠い境遇に置かれ、しかし不屈の精神で自分の地位を確立していく。とても強いヒロインなのだけれど、最初の天真爛漫なお嬢さまが最後には目的のために冷徹な計算もする、どこか歪んだ倫理観さえ持った絶対君主的な女性になっているので、幸せとは……みたいな読後感に。しかしその歪みを「痛ましい」とは感じさせず、主人公はひたすらに気位高く凛として描かれる。とにかくドラマティック。昭和の昼ドラっぽい娯楽性がある。

  • ケン・リュウ『蒲公英(ダンデライオン)王朝記 巻ノ二 囚われの王狼』(訳:古沢嘉通/早川書房,2016年6月/Ken Liu "The Grace of Kings" 2015)
     かつては肩を並べ志を同じくしたふたりが、敵対する間柄に。権力を持つことの重みと人間としてのあり方、歴史に名前が残る意味などに思いを馳せつつ、所詮は高みにおわす神々の戯れや慰みであるとも描写されることですべては悠久の時間の流れの一部なのだという達観も湧いてくる。前の巻では、どうせ私は詳しくないしとあまり「元ネタ」を意識せず書かれているストーリーに没頭していたが、この巻では否応なしに「こう来たか! こうアレンジするか!」と要所要所で下敷きになっている故事を突きつけられて舌を巻かざるを得ない感じ。そして前回も言及したのでしつこいようだが、武侠モノっぽい荒唐無稽なノリやけれん味やお約束感が苦手で敬遠してる人には、裏表紙に「武侠小説」と書いてあるけどあれ気にしなくていいから、とお伝えしたい(私はそういうのも好きで期待しちゃったので初め戸惑ったんだけど)。

  • Shanna Swendson "Rebel Magisters (Rebel Mechanics Book 2) "(NLA Digital LLC, 2016年7月)
     まだイギリスから独立できてない19世紀アメリカが舞台の歴史改変スチームパンクファンタジー、シリーズ2冊目。史実からだいぶ遅れたけどボストン茶会事件、来たーー! 魔力を持つ上流階級に蒸気機関技術で対抗する平民たちによる地下組織の活動メインだった前作に対して、今回は生まれたときから個人の資質を無視して自由意志なく進む道を決められ重税にあえぐ、上流階級のなかに潜む各地の若き反乱分子たちの事情が描かれる。ともに革命を希求するが立場を異にする者たちの接点になるのは、今回も両者の狭間に立ち位置がある主人公のヴェリティ。この主人公がさりげなく有能キャラでしかもがんばっちゃうおかげで、ものごとがどんどん進んでいってあっけないほどなのだが、その「がんばり」の部分が真摯なので素直によかったねと思える。著者としてはこの作品のターゲットを「ヤングアダルト」と想定しているようなので、他シリーズよりも話の流れがさくさくしていてピンチのあとわりとすぐにスカッとする展開になっているのはたぶん意図的。


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