虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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2016年7月〜8月に読んだものメモ
なんかこの夏はあんまり本読みモードじゃなかったです。

  • 山口恵以子『早春賦』(幻冬舎,2015年11月)
     明治維新後に成り上がった実業家の娘が公家華族に嫁いだものの、典雅をよしとする家風のなかで疎外され、夢見た結婚生活とはほど遠い境遇に置かれ、しかし不屈の精神で自分の地位を確立していく。とても強いヒロインなのだけれど、最初の天真爛漫なお嬢さまが最後には目的のために冷徹な計算もする、どこか歪んだ倫理観さえ持った絶対君主的な女性になっているので、幸せとは……みたいな読後感に。しかしその歪みを「痛ましい」とは感じさせず、主人公はひたすらに気位高く凛として描かれる。とにかくドラマティック。昭和の昼ドラっぽい娯楽性がある。

  • ケン・リュウ『蒲公英(ダンデライオン)王朝記 巻ノ二 囚われの王狼』(訳:古沢嘉通/早川書房,2016年6月/Ken Liu "The Grace of Kings" 2015)
     かつては肩を並べ志を同じくしたふたりが、敵対する間柄に。権力を持つことの重みと人間としてのあり方、歴史に名前が残る意味などに思いを馳せつつ、所詮は高みにおわす神々の戯れや慰みであるとも描写されることですべては悠久の時間の流れの一部なのだという達観も湧いてくる。前の巻では、どうせ私は詳しくないしとあまり「元ネタ」を意識せず書かれているストーリーに没頭していたが、この巻では否応なしに「こう来たか! こうアレンジするか!」と要所要所で下敷きになっている故事を突きつけられて舌を巻かざるを得ない感じ。そして前回も言及したのでしつこいようだが、武侠モノっぽい荒唐無稽なノリやけれん味やお約束感が苦手で敬遠してる人には、裏表紙に「武侠小説」と書いてあるけどあれ気にしなくていいから、とお伝えしたい(私はそういうのも好きで期待しちゃったので初め戸惑ったんだけど)。

  • Shanna Swendson "Rebel Magisters (Rebel Mechanics Book 2) "(NLA Digital LLC, 2016年7月)
     まだイギリスから独立できてない19世紀アメリカが舞台の歴史改変スチームパンクファンタジー、シリーズ2冊目。史実からだいぶ遅れたけどボストン茶会事件、来たーー! 魔力を持つ上流階級に蒸気機関技術で対抗する平民たちによる地下組織の活動メインだった前作に対して、今回は生まれたときから個人の資質を無視して自由意志なく進む道を決められ重税にあえぐ、上流階級のなかに潜む各地の若き反乱分子たちの事情が描かれる。ともに革命を希求するが立場を異にする者たちの接点になるのは、今回も両者の狭間に立ち位置がある主人公のヴェリティ。この主人公がさりげなく有能キャラでしかもがんばっちゃうおかげで、ものごとがどんどん進んでいってあっけないほどなのだが、その「がんばり」の部分が真摯なので素直によかったねと思える。著者としてはこの作品のターゲットを「ヤングアダルト」と想定しているようなので、他シリーズよりも話の流れがさくさくしていてピンチのあとわりとすぐにスカッとする展開になっているのはたぶん意図的。


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2016年6月に読んだものメモ
  • 呉明益『歩道橋の魔術師』(訳:天野健太郎/白水社,2015年5月/原書:呉明益『天橋上的魔術師』夏日出版社,2012年12月)
     台北のいまはもうない商業施設で育った人々が、子供時代を回想する連作短編集。その思い出の風景のなかに、マジック用品を売る「魔術師」がさまざまなかたちで登場して、現実と幻想の境界線をほんの少しのあいだだけ曖昧にする。知らない場所なのに、文章だけでノスタルジックな気持ちが湧いてくると同時に、その「境界」が薄れる心もとない感じも切実。実在する映画の実在するシーンと本書の舞台が重なることで、さらに物語内の現実と非現実だけでなく、書物の中と外の境界もまた揺らいできて虚をつかれた。

  • ケン・リュウ『蒲公英(ダンデライオン)王朝記 巻ノ一 諸王の誉れ』(訳:古沢嘉通/早川書房,2016年4月/Ken Liu "The Grace of Kings" 2015)
     巻ノ二が出てからようやくの「一」読了。今年のローカス賞First Novel部門受賞おめでとうございます。神々に見守られる諸島の7つの国を舞台とした戦記もの。下敷きとなっている中国史のとある時代はあるみたいだけど、さほど詳しくないのもあり、ときたま「あ、これはあれを踏まえてる?」などと思いつつも全体的にはほぼ意識せず。違うタイプのふたりの主人公を中心として描かれる、架空の歴史が動いていくさまを面白く読みました。ただ、裏表紙に武侠という文字がありますが、これで「え?」ってなる人いるかも。私はなった(笑)。なんだろう、神々パート以外はすごく堅実に地に足がついてて、リアリティ重視の、容赦なく激動の時代を淡々と冷徹に描く歴史小説の体裁だよなーという感じがして。「武侠巨篇」って言われたらもっと破天荒なこってり娯楽小説! 的なものを予想しませんか、あの惹句はあれでいいのか、みたいな。

  • 山口恵以子『食堂のおばちゃん』(角川春樹事務所,2015年8月)
     東京の佃で営業している人情味ある定食屋さんを舞台にした連作短編集。銀座からさほど遠くないが庶民的な街並み、でも最近は高級マンションが建つように……という立地で、いろんなタイプの人が訪れる巧い設定。出てくるお料理の描写が美味しそう。巻末のレシピ集(というのが付いているのだ)には載ってないけど、登場したなかでいちばん試してみたいのは、鶏挽肉を入れた筍ご飯です。これまでずっと油揚げ派で、そういう発想がなかった。来年、旬になったときまで覚えていますように……と、ここにメモ。

  • Robert J. Sawyer "Quantum Night [Kindle Edition]"(SFWRITER.COM Inc., 2016年3月/底本:Ace, 2016年3月)
     2020年が舞台の近未来もの。2016年現在の世界情勢を踏まえて、けっこうありうるかもしれない社会に、いつものぶっとび珍要素(失礼、でも好きよ)をプラス。今回のネタの一部は、たとえばTwitterで「私のタイムラインではみんなこれに反対してるのに世間の大多数は賛成なの!?」と思ったり、スポーツの試合の勝敗などがきっかけで発生した暴動に参加して破壊活動してしまうフーリガンたちの内面ががさっぱり推測できなかったりといった経験のある人には、かなり心情的にぞわっと迫るものがあるんじゃないだろうか。しかしそこで、この作品のような仮説を立ててしまうと、ミもフタもないというか。理解しあえない人たちは永遠に理解しあえないという、ある意味とても殺伐とした話になってくるので、後味は悪い。
     テーマ的には、以前の "WWW" 三部作と通ずるところが大きいかも。ただ、"WWW" の超越した非生物知性体Webmindがやっていたことを、本作では一介の生身の人間がやろうとして、しかもWebmindと違って「最大多数の最大幸福」追求のために少数の者をばっさり切り捨てることを肯定する思想の人が主人公で、なおかつ作品全体としてもその決断が肯定されるので、やはり後味は悪い。そこへ行くまでの科学的・倫理的な筋道立てのアクロバットは(私の頭では理解しきれてない部分も多いだろうけど)面白いし、SFの意義ってそういう思考実験的なとこでしょ、とは思いつつ。
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2016年5月に読んだものメモ
  • 林綾野『ミッフィーの食卓 なにを食べているの?』(講談社,2016年2月)
     ディック・ブルーナのミッフィー(うさこちゃん)シリーズで食べ物が登場するシーンを拾って紹介。絵本の中ではどれもシンプルにデザイン化されているけど、オランダの食生活などを絡めて具体的にイメージさせる。さらっと読めて、ちょっとだけ物知りになれたような楽しさが。

  • Hao Jinfang "Folding Beijing"(訳:Ken Liu/"Uncanny Magazine Issue Two" 2015年1月掲載/原文:郝景芳《北京折叠》)
     7月に発表される2016年ローカス賞Novelette部門および8月に発表される2016年ヒューゴー賞Best Novelette部門の候補作。膨大な人口を抱えるひとつの都市が時間を区切って物理的に折りたたまれたり展開したりすることで運営されており、市民の生活がはっきりぱっきり分けられた社会。夜間しか活動できない最下層の「第三空間」住人である主人公が、養女を幼稚園に入れる費用を稼ぐため不法に第二空間から第一空間まで手紙を届けにいくことになり、階層間の分断と格差、社会構造の矛盾を垣間見る。現代のアナロジー的に読めちゃう部分が多すぎてなんかどぎまぎする一方で、テクノロジーによって実現している「折りたたまれる都市」のイメージがダイナミックで面白い。中国語の原文もウェブ上で公開されています。

  • 酒井順子『子の無い人生』(角川書店,2016年2月)
     10年以上前に出た同著者のベストセラー『負け犬の遠吠え』を読んだときに、酒井さんは既婚者を即ご自分たちとは別の世界へ行った人みたいに言うけど実際には結婚してても子供がいないと既婚者グループに入れてもらえない場面は多いんだよなあって、少し釈然としないところがあったのです。でも話を単純化するためにそのへんは敢えてスルーしたんだと思ってた。本書の冒頭を読んで、「マジで当時はお分かりじゃなかったんだ!」と愕然とした。でもいまの酒井さんの認識はまた違うんだと知ったことでちょっと胸のつかえが取れた気持ちに(笑)。
     もとから身近なとこでの「子なしあるある」ネタに留まらず、あちこち自発的に取材にも行っていて民俗学的なアプローチもあったりして面白かった。ただ基本、酒井さんはいまのこの時代に子供を持たずに生きていくことについて、最初から「自分はそれ以外ありえなかった」と結論は出ていて、そのうえでの俯瞰的で冷静な社会考察なんだよね。私はまだ「どこで人生が分岐してしまったんだろう」みたいなもやもやを払拭しきれてない修行の足りない段階なわけですよ。少子化ダメと言っても世間が求めているのは健康な若い人が何人も産むことであって、そうじゃない者が医療費を注ぎ込んでがんばって一人だけ産むことじゃないよね(要約)みたいな記述には、深くうなずきつつも涙目なわけですよ。でも折り合いはつけなくてはいけないということは理解しているし、さすがにこの歳になると現に折り合いはついてきて納得できはじめているんだとも、本書を読んでいて自覚が湧いてきました。


  • ケン・リュウ『紙の動物園』(編・訳:古沢嘉通/早川書房,2015年4月/Ken Liu "The Paper Menagerie and Other Stories")
     日本で独自に編纂されたもので、のちに米国で同じタイトルで出た短編集とは収録作が少し違います。刘慈欣の『三体掘抉儻貳任待ちどおし過ぎて、ついに翻訳している人の短編集に手を出しました。
     これ英語で書かれて米国で発表された作品群だけど、向こうの人たちは私たち以上にエキゾチシズムを感じているのでは。予想よりずっと、中国生まれ米国育ちという作者のバックグラウンドが作品に反映されていた。元来、小説を読むときに作者の経歴を念頭に置くのはあまり好きじゃないんだけど、一見、中華要素のない「選抜宇宙種族の本づくり習性」(これすごい好き!)なんかも、語彙がどんどん増えていく年齢の頃に多重的な文化・言語環境に置かれたことが遠くから影響してるんじゃないかなあとか思ってしまう。
     表題作をはじめとして、いくつかは「これを包含できるんだからSFというのは懐の深いジャンルだわ」と、いい意味で呆れつつ感心しながら読んだ。登場人物の目に映る世界の境界線のゆらぎが作品構成のゆらぎとも呼応するようなところに実験的な精神も感じる、ような気もして(自分が受けた印象をうまく説明できている自信がないけど)、そういう部分はたしかにSFであるとも思う。


  • Alyssa Wong "Hungry Daughters of Starving Mothers"("Nightmare" Issue 37 2015年10月15日号掲載の短編)
     2015年ネビュラ賞(選考発表は今月)のShort Story部門受賞作。SFというか、百合ホラー? 人間の精神というか感情を糧にしないと生きられない主人公の女性が殺人鬼の濃厚な感情を摂取したことでほかの希薄な感情では飢えが満たされなくなってしまう一方で、常に清らかでポジティブな感情しか発していない同性の友人への憧れがつのるあまり、わざと疎遠に、しかし……みたいな(雑な説明)。この作者はファミリーネームを見るに中華系なのかな。実家に帰るとお母さんが台湾ドラマを見てるってシーンがあるので、このヒロインは台湾系? 英文のなかに唐突に説明なしに出てくるアルファベット表記の「○○○○」は中国語の「□□」(ネタバレ回避のため伏字)ってことでいいんだよね?
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2016年4月に読んだものメモ
  • 沖藤典子『老妻だって介護はつらいよ 葛藤と純情の物語』(岩波書店,2015年8月)
     突然重い病気が発覚した夫を看取るまでの、いわゆる「老老介護」の日々を、かなり大胆に本音で書き綴った体験記。決して順風満帆にやってきた夫婦ってわけではなかっただけにさまざまな葛藤があるんだけど、基本的にこのかみ合わなさとか、その背後にある長年の夫婦間のわだかまりとかは、私らの世代よりずっと強固なプレッシャーとなっているであろう、家父長制・夫唱婦随的価値観のせいなんだよなあ、たぶん。現実に一人で通院できてる夫に、仕事のある妻が付き添わなかったというだけでお医者さんから叱られるなんて、これおそらく男女が逆ならないよね……。
     とにかく妻の立場からのみ書かれているので、本書に登場させられた周囲の人たちには別の言い分もあるだろうとは思うし、読んでてかなり嫌な気持ちになるところもあるんだけど、どう考えてもいちばんしんどかったのは、渦中にいるとき気持ちのガス抜きすら非難される状況に置かれていたこの著者なのでなあ。そして最終的にはそんなもやもやも浄化されていくわけで、何十年も連れ添った夫婦というのは複雑で不思議なものですね(と、今月やっとこさ結婚18周年だった私が言ってみる)。


  • 乾石智子『竜鏡の占人 リオランの鏡』(角川書店,2014年8月)
     視点人物の一人が情状酌量の余地なく魂の病んだ「悪者」として一貫したまま話が進んでいくので、もう一人の主役の素直な成長ぶりに癒されてた。それぞれのキャラの特性を敢えて複雑にせず特化してテンポを速めている感じ。各地の民の文化描写が楽しい。

  • 乾石智子『双頭の蜥蜴(サラマンダー)』(講談社,2015年8月)
     抑圧された人生を送ってきた少女が、押しつぶされずに自分の力で生きていこうとする戦いの物語。現代のニューヨークに住むティーンエイジャーが主人公なせいか、正統派ジュヴナイルな雰囲気。異世界ものでもあるんだけど。この著者で現実世界とリンクのある話はいまのところこれだけかな。なんかすごく新鮮だったので、いつか日本の街並みや日本人の少年少女たちの学校生活などを乾石さんならどう描写するのか読んでみたいと、少し思いました。

  • 春日武彦『鬱屈精神科医、占いにすがる』(太田出版,2015年12月)
     なんというか、面白いんだけど、とても感想を書きにくい。読み手である私よりずっと功績も地位もある年上の男性が、しかも精神科医の先生が、とつとつと理詰めで内面の弱みや迷いをさらけ出していくことに戸惑いつつページをめくっていると、だんだんと共振が起こってきて、やがて人生のうちのいくつかのほんの一瞬の情景が切り取られ遠い記憶のなかで個人的な意味を持つことへの厳粛な気持ち、みたいなものの印象だけが静かに残った。

  • 王谷晶『探偵小説(ミステリー)には向かない探偵』(集英社オレンジ文庫,2016年4月)
     過去に挫折を味わってなかば開店休業状態にある私立探偵が、謎に包まれた美青年と関わりを持ったことをきっかけに事件に乗り出していくようになる。私は巣鴨って噂に聞くばかりで足を踏み入れたことがない地方出身者なんですが、おそらくかなり実地に即した記述なんだろうなというリアルな感触があって、ちょっと探訪してみたくなるような、私ごときが野次馬根性でうろうろしてはいけないところなのではないかというような。若者ふたりを取り巻くおばあちゃんたちのパワーとテンポのよさも、そこにトボけたズレをもたらす、図体は大きいのにいたいけなまでに世間知らずの青年・絽爛と主人公のやりとりも楽しい。最後はきみらの未来に幸あれと祈りつつ読み終えた。


  • よしながふみ『大奥』第13巻(白泉社,2016年5月)
     内容とは別に、帯のコピーの煽りがちょっと(笑)。社会が大きく変遷していくときには、たとえそれが必然であり正当な流れであったとしても、そこから取りこぼされてしまう者は出てきちゃうよな、みたいなことを考えながら読んでいた。現代にも通ずる問題がさらっと出てきていてぎくりとする。あと、どの時代にも魅力的に描かれる人物が出てきて、そのつど「これがこの物語全体でのベストキャラかも」と思うんだけど、代替わりするとまた別タイプの魅力を持った人物が出てきて、なおかつ史実と要所要所で整合するのすごいな。
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2016年3月に読んだものメモ
  • 深澤真紀『女オンチ。女なのに女の掟(ルール)がわからない』(祥伝社黄金文庫,2016年2月)
     ウェブ連載と巻末の対談は断片的に読んでいた。生活上のこまごまとした不都合など共感できる点も多かったし、自分とは違うところも興味深くて面白かったんだけど、本書で言われる「女子力」とか「女らしさ」がどうも自分には理解できてないと途中から気付き始めた。だから、そこからの逸脱ぶりが語られても「え、それってそもそも女かどうかが関係ある問題だったの!?」みたいになってしまう。もしかしたら私、着るものの好みとか背の低さとかで結果的におそらく第三者から見て深澤さんより女性的な雰囲気になってはいるかもしれないけど、魂の面ではよっぽどオンチなのかも、と考え込んでしまった。反面、女オンチを自称する深澤さんにも実は分かってなくて、僭越ながら言わせてもらうなら、本来なら女かどうかの問題じゃないところまでを「女」の問題に含めてしまっている可能性も……と思わないでもないんだけど。私もオンチ自認なので分かんない!
     えーと、私がいままでイメージしていた「女子力」っていうのは、自分が生きている時代において世間的にフェミニンとされる言動やモノを好むひとが、他人の干渉や「だから女は……」みたいな批判があっても意に介さず、周囲を振り回すことになってでもその路線を突っ走る、見ようによっては暴力的なものだったんだけど、本書で言われる女らしさっていうのは、もっと周囲の視線とのかねあいで決まる、抑制ののすえに発揮される協調的なものって感じ?(すみませんマジでよく分かってないので違うかも。)とにかく、外出先で時間をつぶすための軽い読み物のつもりで購入したのに、1週間以上かけてうんうん悩みながら読んでしまったよ。グイン・サーガを1日で19冊読んだこともあるこの私が!


  • 畠中恵『たぶんねこ』(新潮文庫,2015年12月/親本:2013年7月)
     シリーズ第12弾。若だんなが「大店の跡取り」という共通した立場の青年たちと一緒によその家で寝泊りするという状況が新鮮。仁吉視点のお話では、あやかしとしての年月よりも若だんなとの日々のほうが無意識のなかに染み付いているんだなってとこが感慨深い。

  • 有川浩『だれもが知ってる小さな国 Colobockle Story』(絵:村上勉/講談社,2015年10月)
     佐藤さとるさんの名作児童文学シリーズの、いわば「公認二次創作」。語り手が季節の変わり目ごとに全国を旅していく養蜂家のおうちの子というのには意表を衝かれたけど興味を引くしいろいろと理にかなっている。ただ、もとの『だれも知らない〜』のせいたかさんと違って、本書でコロボックルの「トモダチ」に選ばれるこの子供たちは、最初から囲い込まれ見守られたサラブレッドで、実質、人生選択の余地が与えられていないし、この世には小人たちに守られない、天使のような愛らしさを認められることもない数多の「ミノルさん」がいるんだと考えてしまうのも避けられなくて、少しせつない。もっとも本当は誰にとっても選択の余地なんて限定的なものであって目の前にひらけたいくつかの道のなかのどれかに進むしかないわけで、こんな素敵な運命の出会いを与えられそれを失わずにすんだことのほうが物語としてはずっと幸せなのだろう。
     ところで私はもとのシリーズが大好きだったので本書はそのつながりで目に留まって読んだけど、あとでネットで検索したら、有川さんファンでこれが初めてのコロボックル物語だという人も多くて、なるほど、いまの人気作家のかたが書き継ぐことに、佐藤さんご自身の新作が出るのとはまた違った意義があるのだなと納得した。現代に近い時代設定、そして佐藤さんのコロボックル物語を作中の登場人物も読んでいるというメタ構造が、そういう新規読者も、もとのシリーズにさかのぼっていきやすいであろう仕掛けになっている。


  • 三浦しをん『あの家に暮らす四人の女』(中央公論新社,2015年7月)
     なんだよ「カラスのイデア」って、と笑っているとやがてさらにすごい事実(?)が判明するのだが、ぜんぜんすごさを盛り上げない筆致で淡々と静かにツッコミが入りつつ、変化する部分もしない部分も呑み込まれていって飄々とした読後感を残す。

  • 鈴木明子『プロのフィギュア観戦術 選手たちの心理戦から演技の舞台裏まで』(PHP新書,2016年1月)
     今シーズン開幕直後くらいまでの情報に基づいた、初心者をやさしく手招きしてくれる観戦の楽しみ方や注目ポイント指南に、2014年ソチオリンピックの舞台裏、選手側の心情、フィギュアスケート界の未来への展望などなど。語り口が暖かい。

  • ワールド・フィギュアスケート編『よくわかるフィギュアスケート』(新書館,2011年2月)
     2011年刊行なので情報はその時点までのものなのだけど、コンパクトに初心者向け基本情報がまとまっている。漠然とした断片的な情報が散らばっていた頭のなかが、かなり整理されたよ。
     ただそれでも時に「え、それはどゆこと?」って引っかかって少し混乱したところがあったので、その世界にどっぷり漬かった人が本当に本当の初心者にもすらすら読めるように書くって難しいんだろうなということに思いを馳せたり(いや、そこまで致命的な初心者は想定されてなかったのか)。そして基本を押さえたあとは自力で脳内情報を更新していくしかないのだろうとは思うものの、新たにハマる人は常に発生するので、こういう手に取りやすい版型の解説書、数年に1回くらい出てくれたら嬉しいのにな。ちょこちょこルール改定される競技だし。私が発見できてないだけかもだけど。
     最初のほうの、19世紀から始まるフィギュアスケートの歴史解説が知らなかったこといっぱいでとても面白かった。おぼろげにリアルタイムで記憶にある世間で大きく話題になってたフィギュア界でのあれこれも、これまで私の脳内では時系列がごっちゃになっていたことに気付いた。


  • 乾石智子『炎のタペストリー』(筑摩書房,2016年3月)
     強大な力を持つことの恐ろしさを身をもって知る少女が、否応なしに軍事の中枢に巻き込まれていく。胸の内に生まれる感情が色彩豊かな毛糸の玉として表現されるのが面白かった。これがクライマックスに活きてくる。この著者の、抽象的なものを具象に落とし込むやりかたがすごく好き。
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