虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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管理人ならのが、そのときどきに考えたことや興味を引かれたもの、読んだものなどについて、心のおもむくままに、だらだらと綴るところです。心がおもむかないときは、更新停止しています。
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2012年4月に読んだものメモ
量的にはあんまり読めないまま月末を迎えてしまったんですけど、読書生活以外が充実してたってことにしておいてください。


  • 五代ゆう『柚木春臣の推理 瞑る花嫁』(双葉社,2012年2月)
    様式美を感じさせる旧家の洋館を舞台としたミステリ。いろいろてんこ盛りで嬉しくなってくる。特異な性質を持つ孤高の探偵役には、過去の事件群の存在が示唆されているけど、今後の作品で語られるのかな。検索で見つけたこれも、本作中で語られてる過去の事件のうちの1つだと思うのですが、最終更新が2009年のままウェブ上では完結してないみたい。「続きはいずれ出る単行本で」ってことなんでしょうか。

  • 加納朋子『無菌病棟より愛をこめて』(文藝春秋,2012年3月)
    白血病闘病記。的確に状況を説明しつつ、門外漢の読み手を共感させ、笑いどころも盛り込んでしまうプロの技。骨髄移植ドナーとなった弟さんの手記もいい文章でした。大変な内容ですが、読めてよかった。

  • 円城塔『道化師の蝶』(講談社,2012年1月)
    第146回(平成23年度下半期) 芥川賞受賞作。読むうちにくるくると解釈が変わっていくけど、ただただそれに身を任せて流されていくだけで面白い。脳内に形成されるイメージの奇妙な優雅さを味わってるだけでも楽しい。娯楽性が高い(初心者に親切な?)のは、併録の「松ノ枝の記」のほうかも。繰り返し翻っていくテキストもその他のモチーフも、実体験上の感覚をかぶせやすい気が。

  • 乾石智子『魔道師の月』(東京創元社,2012年4月)
    前作の彼にはこんな時代もあったのですね、というお話。やはりどこまでも奥のほうまで旅していけそうな広がりが感じられる世界。「魔法」の成り立ちや発動の仕組みを皮膚感覚で理解させてくる筆致にわくわく。鏡像のようなもう一人の主人公とのコンビっぷりもよい。


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2012年3月に読んだものメモ
ひゃー、もう今年も4分の1が終わってしまったのですね。

  • 沼田まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』(幻冬舎文庫,2009年10月/親本:2006年10月)
    どよどよとよどんだ空気に、生命力を吸い取られるような。読んでるとすーっと貧血になっていく感じで、読了後も身体がだるい。反面そのだるさのなかに、歪んだ甘さや心地よさがあって、なんだか怖い。

  • 中野翠『金魚のひらひら』(毎日新聞社,2011年12月)
    毎年末に出る時事コラム集。去年もちょうど3月に、一昨年分をまとめ読みして当時の出来事に思いを馳せることで、震災直後の千々に乱れた心が束の間、鎮められたのだった。まあぶっちゃけ過去への逃避ですけど。今回の分にはいよいよ、震災関連のリアルタイムな記述が。やはりいろいろ思い出されて内容関係なく胸が苦しくなったり。しかしその一方で、60代半ばの著者がシンプルに直感的に周囲の動向に反応し、変わらず趣味の世界を大切にし、小さな引っかかりを見逃さず日々を過ごしているさまを、頼もしく感じた。

  • 柚木麻子『あまからカルテット』(文藝春秋,2011年10月)
    食べ物やお酒がキーになる連作短編集。それぞれタイプが違う親友4人組の、個々の葛藤を自分で引き受けててべったりはしてないんだけど、いざとなると結束強く助け合う精神がすがすがしい。美味しそうなものがいっぱい登場。

  • 雨宮まみ『女子をこじらせて』(ポット出版,2011年12月)
    赤裸々な半生記。でもたぶん「共感されうる」という確信があるからこそ書けてるんだよね。実際、他人の目をいつのまにか内面化するというのは本当に対処が厄介で、私もどこまで自覚・解体できているか分からない。

  • 多和田葉子『雪の練習生』(新潮社,2011年1月)
    ホッキョクグマ三代記。亡命作家だった初代から動物園生まれのその孫クヌート(!)まで、徐々に人間社会との融和性は薄れるが親愛の情は強まりゆく。現実と非現実のあわい、言語による世界認識の変遷などの揺らぎに気分よく翻弄された。

  • 津村記久子『ワーカーズ・ダイジェスト』(集英社,2011年3月)
    嫌なこと鬱陶しいこともあるけど嬉しいこと楽しみなことをつないで、疲れているけど今日も普通に生きていく。きっとこういうひとたち、この世界にいっぱいいるよねと思わせる。淡々と堅実な筆致に好感。


  • 沼田まほかる『ユリゴコロ』(双葉社,2011年3月)
    謎めいた冒頭も過去と現在の交錯もよくある構成なのに引き込まれる。筆致に余裕があって適度に情念が抑制されてる感じで、これまでに読んだ同著者の作品のなかではアクが弱いほうかも。そして私はこれくらいの匙加減が好きかも。

  • 北大路公子『生きていていかしら日記』(毎日新聞社,2008年1月)
    平和な身辺雑記なのに、妙に可笑しい。大きなできごともなく脳内でぐるぐるしているだけなのに、なんかこう、思考がいきなりぴょん! と妄想側に飛ぶ感じ。でも彼方まではぶっ飛ばないのがまたホッとする。

  • 北大路公子『頭の中身が漏れ出る日々』(毎日新聞社,2010年3月)
    身辺雑記つづき。大局的には相変わらずの日々。お父さんの(他人として読めば)かわいいネタがいくつもあって印象的。あと犬さんのお話にしんみり。でも湿っぽく書いてないので湿っぽく受け止めては失礼かも。

  • 宮下奈都『誰かが足りない』(双葉社,2011年10月)
    評判のレストランに予約を取るに至るまでの、各人各様な経緯。物語の核となるお店の、誰からも特別視されてるさまが、ふわふわと現実味を削いでいて意図的なんだろうけどもどかしい。私の食い意地が張ってるから?





3月31日に、この日で閉店してしまったジュンク堂新宿店に行ってきました。ビルの3フロアを使った大規模書店で、充実した棚のファンも多かったはずでしたが、このたびビル全体が家電量販店に売却されてしまい、閉店を余儀なくされたのでした。

私の自宅からは遠かったので、そんなにしょっちゅう足を運んでいたわけではありませんが、ここではいろんな、ネットを見ているだけでは知ることができなかったであろう本に出会うことができました。出版時期の新しいものやそのときどきの売れ筋に限らず、時には既存のジャンル分けを超えてまで、「これに興味があるなら、こっちも読んでみれば?」と知らなかった本をどんどんおすすめしてくれるような、いかにも「分かってるひと」の並べ方が、ここかしこで目についたんだよなあ。いつまでも、店内をぶらぶらしていられた。

最終日はすでに片づけが始まっていて、すっからかんになった棚も多かったのですが、店員さんたちが熱意いっぱいにさまざまな本を推薦してるメモがベタベタと貼られまくった棚が各ジャンルのコーナーに設置されていたりと、最後まで本好きによる本好きのための大型書店でした。これまで本当にありがとう。とっても好きな本屋さんでした。
Posted at 23:31 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
2012年2月に読んだものメモ
ここに載せてる「読んだものメモ」は、基本的に読了時にTwitterでつぶやいたものを転載しているんですが、だんだんツイートひとつ分(著者名・タイトル合わせて140字)に収まっていないのが増えてきてますね。「メモ」は簡潔さに意義があるので、ちょっと反省している(ていうか、言い足りないならブログ書けばいいじゃん>私)。



  • フカザワナオコ『おひとりさまの「はじめまして」』(幻冬舎,2011年5月)
    独り暮らしの著者がいろんな「初めて」の体験に挑戦。でも友達とわいわいやってたりと、タイトルとは裏腹ににぎやかな印象。ドリアンはこの本でだいたいイメージできたので私は一生食べなくてもいいや。

  • 西原理恵子『毎日かあさん8 いがいが反抗期編』(毎日新聞社,2011年8月)
    主眼は息子くんの反抗期なのかもしれないけど、娘ちゃんのおしゃまさんな逸話にウケる。こういうのを読むといつも、自分は頭でっかちで豪快さに欠ける小心者ですよ、すみませんねえという気持ちに。

  • 青木光恵『洋服を9枚に減らしてみた。 服の賞味期限、見直し大作戦』(メディアファクトリー,2011年8月)
    いや、9枚に減ってない(笑)。でもお洋服や女の子の絵がかわいくて楽しく読みました。私もいろいろ整理はしたいんだよねー。ただなんでもかんでも捨てたくはないというあたりに、親近感。ほぼ同年代だし。「日本がまだ今より豊かだった時代」のピンクハウス服を観賞用に取っとく話に深く頷いた。私自身は値段的にもデザインの好み的にも縁がなかったけど、かつての勤め先に常にPH着用の人がいて、たしかに近くで見るとあれは既製服というより、もはや「工芸品」だなあと思っていた。

  • 荒川弘『百姓貴族』第2巻(新書館,2012年3月)
    1巻からさらにパワーアップ。『銀の匙』とネタがかぶらないのすごいな。野菜は心して大切に食べようと改めて思いました。ペット牛シミュレーションが細かいとこまでノリノリでリアルに突き詰めててすごく笑えた。シャレにならない過酷な話題とか、非農家の人間に対してもっと説教臭くなっても仕方がないような話題でも、笑えるように描いてくれるところが、荒川さんすごいなあって思います。ところで、2巻収録分から、掲載誌が『ウィングス』になったんですね。途中で「これ少女誌連載だから……」というネタがあって、ちょっとしみじみした。私が毎号買ってた頃の『ウィングス』は、執筆陣に聖悠紀やたがみよしひさが入ってて、ぜんぜん少女誌じゃなかったんだよ(笑)。



ところで今月「お!」って思ったニュースは、ハリー・ポッター映画版でハーマイオニーを演じていたエマ・ワトソンちゃんが、ギレルモ・デル・トロ監督の『美女と野獣』映画版に主演するというやつ。

記事(映画.com 2012年2月14日)をよく読むと、もともとはロビン・マッキンリイの1978年のデビュー作 "Beauty: A Retelling of the Story of the Beauty and the Beast"(私の感想)の映画化企画だったというではないですか!

マッキンリイ版「美女と野獣」ヒロインは、たおやかな乙女タイプとはひと味違うキャラなんですが、結局そのまま原作として使われるわけではなくなったにせよ、ある程度は映画でも踏襲してくれるかな? ってわけで、ちょっと楽しみにしています。

Posted at 19:37 | permalink | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark
2012年1月に読んだものメモ
年末の記事で、本のタイトルからネット書店の書誌情報にリンクしてみたら、いつもあんまり内容そのものが紹介できてなくて言葉足らずな自分のコメントを補ってもらえるような安心感があったので、今年はこの方式で行ってみる。「どういう本なの?」と、ご興味がわいたらぜひ書誌情報をご覧ください。

今年もよろしくお願いします。




Posted at 17:10 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
2011年は……
さまざまに価値観を揺さぶられ、そして同時に、揺るぎのない部分を自覚した、一年でした。そしていま実感しているのは、言ってみれば当たり前のことなんだけど、「私が生きているかぎり、私の時間は進む」ということです。よくも悪しくも。進んでくれるし、進んでしまう。

何かをしなくてはと焦っているうちに容赦なく時が流れ、どんどん本来あるべきだった状態に遅れをとってしまったりする反面、ある時点ではいつまでも続くかと思えた痛みも、目の前のことだけ見つめてじっと耐えているうちに、いつのまにか時の流れとともに緩和されている(こともある)。

そんなことが、改めて考えると、けっこうすごいことのように思えたのです。

さて。大晦日でもあることなので、去年と一昨年にならって、今年読んだ本のなかから、印象に残ったものを5冊、選んでみました。順不同……でもないかな。今回はわりと、インパクトの強かったもの順かも。リンク先は、Amazon.co.jpの詳細情報ページです。


  • Elizabeth Edwards "Resilience: Reflections on the Burdens and Gifts of Facing Life's Adversities"(Broadway, 2009年5月〔最終章のみ2010年〕)
     5月読了。真っ先に挙がるのが、米国セレブ自伝本っていうのはどうかと思われる向きもあるかもしれませんが、今年は迷わずこれがトップ。次々と襲いかかる、自分では防ぎようのない苦難を前に、「なぜ自分が、こんな目に?」と茫然とするところから、徐々に運命を受け入れ気持ちの上で立ち向かっていくまでの心の動きが、とても繊細なやわらかい文章で綴られていました。結局、著者の方は闘病の末、ちょうど1年前、2010年12月に亡くなってしまったのですが。とにかく、文章が魅力的だった。
     そして私自身が今年は、ずっと低い次元でのものではありましたが「なぜ、こんなことに?」と考えてしまうような局面に遭遇していたため、読み終えたあと何ヶ月にもわたって、心の指針を探すうえでの、よすがのひとつとなりました。



  • 乾石智子『夜の写本師』(東京創元社,2011年4月)
     8月読了。緻密に構成された、奥行きのある架空世界。淡々と静かなのに、こちらに向かって圧力を感じる文章。すごく好きなタイプのファンタジーでした。特に意識せずに読み始めたのに、読んでるうちに、じわじわと「ああ、こういうのを私は求めていたんだなあ」と目の前が開けてため息がもれるような。今後の作品にも期待。


  • Robert J. Sawyer "WWW: Wonder"(Ace, 2011年4月)
     4月読了。3部作の完結編で大団円(個人的には、本当にこれを完璧な大団円と言っていいのかちょっと引っかかりはするんだけど、少なくともソウヤー自身は、めでたしめでたしの解決はこうじゃないと、と信じていることがうかがえる)。なんだかんだ言ってもソウヤーは好きなんだよね。いつも、作者の主張が前面に出すぎじゃないかとか、あまりに性善説だとか、未来を信じすぎだぜと思いつつ、結局はその前向きな甘さがあってこそのソウヤーなんだなって。
     今年の春は、なにかと落ち込み気味だったので、これくらい脳天気なお話が読めてよかった。私たちが生きている「いま」と地続きの近未来におけるインターネットの、もしかしてもしかしたら、あり得るのではというくらいリアリティを感じさせると同時に、どう考えても発想がぶっ飛んでる事象(なんて表現では言い表せないかもしれないけど)の描き方も、すごくわくわくして面白かった。



  • 大野更紗『困ってるひと』(ポプラ社,2011年6月)
     7月読了。ちょうど7月下旬から9月上旬の、入院期間中に読んでた本でした。著者の大野さんに比べれば、私のはぜんぜん大したことない病状でお気楽と言っていい入院生活だったけど、病院やお医者さんたちのことについて、ツボにはまる表現があちこちにあってなんとなく臨場感。本当は、比べることすらおこがましいわと思えるくらい、難病に苦しむ大野さんが置かれた状況はすさまじいのですけれど。それをこんなふうにライトな文体で面白い読み物として書けてしまう精神力には、本当に驚嘆。
     入院中は、退院間際になってすべての検査結果が出るまで、今後どのように自分の病気とつきあっていけばいいのかの方針がはっきりせず宙ぶらりんだったので、脳内で自分の貯金と今後かかっていく医療費に基づきいろんなシミュレーションをしては「金の切れ目が命の切れ目」的な世界がひしひしとリアルに迫ってくるえげつなさに、なんだかかえって可笑しみさえ感じて笑えてきたりしていたのですが、この本のことを思い出したら、へらへら笑ってるだけじゃダメなんだ(笑うことも必要だけど)、実務的なことをちゃんと考えて、自分だけのことに終わらないさまざまな問題点を考えていかなければ、と地に足がついたような気がしました(気がしただけかも)。
     あ、結局、少なくともいまのところは、これからずっと気にしていく必要はあるけど、最初に覚悟していたほど深刻な事態には陥らずにすんでいます。一部の方々には一時期、ご心配をおかけしてすみませんでした。でもこのとき考えたことは、忘れないようにする。



  • 白井恵理子『劉備くん 阿斗のまつり』(メディアファクトリー,2011年3月)
     3月読了。あの大地震の直後からしばらく、実際にはしつこい余震と輪番停電に翻弄されたくらいで、直接被災したわけでもないくせに、なんだか現実に打ちのめされてしまったような感じで、本、特にフィクションに没入することができずにいました。これは月末になってようやく手を出したフィクション(4コマ漫画だけど)のうちの、1冊です。
     そして、連載していた雑誌がなくなってしまったため、長いあいだ楽しませてもらった「劉備くん」シリーズの、メディアファクトリーでの最終巻でもありました。最後にこのタイミングで出版されて、理不尽に沈みがちな気持ちを浮上させてもらえた、めぐり合わせに感謝しています。誰も死なない(というか、たとえ死んでても登場する)、みんなが基本的には仲良しになっちゃってる不思議な三国志ワールドが、私は大好きでした。どの子もこの子も、キャラがみんな愛しい。これまで掲載誌を変えつつ、何度も復活しているシリーズなので、いつかまたどこかで出会えることを信じてる。



こうやって書き出してみると、私にとってのインパクトがあった本というのは、その本を読んだときの私自身の状況とも、密接に関わっているのだなって分かりますね。純粋に「作品内容」の好みだけで選べと言われたら、また違うランキングになってきそう。

しかし私は、ひとさまが書いたものを評価するような偉い人じゃないし、ここは私が私の気持ちを記録するための、私のブログなんだから、きっとこれでいいのだ。

ついでに、もしベスト5じゃなくベスト10にしてたら挙げたかな、というあと5冊の本もリストアップしておこう。こっちは、本当に順番がつけられなかったので、ぜんぶ同列6位って感じです(というか、白状すると、順番を考えてコメントを書く根性が続かなかったのです)。やはりリンク先はAmazon.co.jp。




今年も、そこかしこで、おつきあいくださったみなさま、どうもありがとう。2012年もよろしくお願い申し上げます。
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