虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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2011年は……
さまざまに価値観を揺さぶられ、そして同時に、揺るぎのない部分を自覚した、一年でした。そしていま実感しているのは、言ってみれば当たり前のことなんだけど、「私が生きているかぎり、私の時間は進む」ということです。よくも悪しくも。進んでくれるし、進んでしまう。

何かをしなくてはと焦っているうちに容赦なく時が流れ、どんどん本来あるべきだった状態に遅れをとってしまったりする反面、ある時点ではいつまでも続くかと思えた痛みも、目の前のことだけ見つめてじっと耐えているうちに、いつのまにか時の流れとともに緩和されている(こともある)。

そんなことが、改めて考えると、けっこうすごいことのように思えたのです。

さて。大晦日でもあることなので、去年と一昨年にならって、今年読んだ本のなかから、印象に残ったものを5冊、選んでみました。順不同……でもないかな。今回はわりと、インパクトの強かったもの順かも。リンク先は、Amazon.co.jpの詳細情報ページです。


  • Elizabeth Edwards "Resilience: Reflections on the Burdens and Gifts of Facing Life's Adversities"(Broadway, 2009年5月〔最終章のみ2010年〕)
     5月読了。真っ先に挙がるのが、米国セレブ自伝本っていうのはどうかと思われる向きもあるかもしれませんが、今年は迷わずこれがトップ。次々と襲いかかる、自分では防ぎようのない苦難を前に、「なぜ自分が、こんな目に?」と茫然とするところから、徐々に運命を受け入れ気持ちの上で立ち向かっていくまでの心の動きが、とても繊細なやわらかい文章で綴られていました。結局、著者の方は闘病の末、ちょうど1年前、2010年12月に亡くなってしまったのですが。とにかく、文章が魅力的だった。
     そして私自身が今年は、ずっと低い次元でのものではありましたが「なぜ、こんなことに?」と考えてしまうような局面に遭遇していたため、読み終えたあと何ヶ月にもわたって、心の指針を探すうえでの、よすがのひとつとなりました。



  • 乾石智子『夜の写本師』(東京創元社,2011年4月)
     8月読了。緻密に構成された、奥行きのある架空世界。淡々と静かなのに、こちらに向かって圧力を感じる文章。すごく好きなタイプのファンタジーでした。特に意識せずに読み始めたのに、読んでるうちに、じわじわと「ああ、こういうのを私は求めていたんだなあ」と目の前が開けてため息がもれるような。今後の作品にも期待。


  • Robert J. Sawyer "WWW: Wonder"(Ace, 2011年4月)
     4月読了。3部作の完結編で大団円(個人的には、本当にこれを完璧な大団円と言っていいのかちょっと引っかかりはするんだけど、少なくともソウヤー自身は、めでたしめでたしの解決はこうじゃないと、と信じていることがうかがえる)。なんだかんだ言ってもソウヤーは好きなんだよね。いつも、作者の主張が前面に出すぎじゃないかとか、あまりに性善説だとか、未来を信じすぎだぜと思いつつ、結局はその前向きな甘さがあってこそのソウヤーなんだなって。
     今年の春は、なにかと落ち込み気味だったので、これくらい脳天気なお話が読めてよかった。私たちが生きている「いま」と地続きの近未来におけるインターネットの、もしかしてもしかしたら、あり得るのではというくらいリアリティを感じさせると同時に、どう考えても発想がぶっ飛んでる事象(なんて表現では言い表せないかもしれないけど)の描き方も、すごくわくわくして面白かった。



  • 大野更紗『困ってるひと』(ポプラ社,2011年6月)
     7月読了。ちょうど7月下旬から9月上旬の、入院期間中に読んでた本でした。著者の大野さんに比べれば、私のはぜんぜん大したことない病状でお気楽と言っていい入院生活だったけど、病院やお医者さんたちのことについて、ツボにはまる表現があちこちにあってなんとなく臨場感。本当は、比べることすらおこがましいわと思えるくらい、難病に苦しむ大野さんが置かれた状況はすさまじいのですけれど。それをこんなふうにライトな文体で面白い読み物として書けてしまう精神力には、本当に驚嘆。
     入院中は、退院間際になってすべての検査結果が出るまで、今後どのように自分の病気とつきあっていけばいいのかの方針がはっきりせず宙ぶらりんだったので、脳内で自分の貯金と今後かかっていく医療費に基づきいろんなシミュレーションをしては「金の切れ目が命の切れ目」的な世界がひしひしとリアルに迫ってくるえげつなさに、なんだかかえって可笑しみさえ感じて笑えてきたりしていたのですが、この本のことを思い出したら、へらへら笑ってるだけじゃダメなんだ(笑うことも必要だけど)、実務的なことをちゃんと考えて、自分だけのことに終わらないさまざまな問題点を考えていかなければ、と地に足がついたような気がしました(気がしただけかも)。
     あ、結局、少なくともいまのところは、これからずっと気にしていく必要はあるけど、最初に覚悟していたほど深刻な事態には陥らずにすんでいます。一部の方々には一時期、ご心配をおかけしてすみませんでした。でもこのとき考えたことは、忘れないようにする。



  • 白井恵理子『劉備くん 阿斗のまつり』(メディアファクトリー,2011年3月)
     3月読了。あの大地震の直後からしばらく、実際にはしつこい余震と輪番停電に翻弄されたくらいで、直接被災したわけでもないくせに、なんだか現実に打ちのめされてしまったような感じで、本、特にフィクションに没入することができずにいました。これは月末になってようやく手を出したフィクション(4コマ漫画だけど)のうちの、1冊です。
     そして、連載していた雑誌がなくなってしまったため、長いあいだ楽しませてもらった「劉備くん」シリーズの、メディアファクトリーでの最終巻でもありました。最後にこのタイミングで出版されて、理不尽に沈みがちな気持ちを浮上させてもらえた、めぐり合わせに感謝しています。誰も死なない(というか、たとえ死んでても登場する)、みんなが基本的には仲良しになっちゃってる不思議な三国志ワールドが、私は大好きでした。どの子もこの子も、キャラがみんな愛しい。これまで掲載誌を変えつつ、何度も復活しているシリーズなので、いつかまたどこかで出会えることを信じてる。



こうやって書き出してみると、私にとってのインパクトがあった本というのは、その本を読んだときの私自身の状況とも、密接に関わっているのだなって分かりますね。純粋に「作品内容」の好みだけで選べと言われたら、また違うランキングになってきそう。

しかし私は、ひとさまが書いたものを評価するような偉い人じゃないし、ここは私が私の気持ちを記録するための、私のブログなんだから、きっとこれでいいのだ。

ついでに、もしベスト5じゃなくベスト10にしてたら挙げたかな、というあと5冊の本もリストアップしておこう。こっちは、本当に順番がつけられなかったので、ぜんぶ同列6位って感じです(というか、白状すると、順番を考えてコメントを書く根性が続かなかったのです)。やはりリンク先はAmazon.co.jp。




今年も、そこかしこで、おつきあいくださったみなさま、どうもありがとう。2012年もよろしくお願い申し上げます。
Posted at 14:16 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark