虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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伊藤理佐『おんなの窓』第3巻
2巻でご結婚なさったときに、漫画のネタがなくなることを恐れていた伊藤さんですが、いやいやぜんぜん心配ないですよね!

結婚後もご夫君を「吉田さん」としか呼べないうえに、ふたりとも自分の会社を持っているために領収書をもらうときも別々で、傍から見るとなんだか怪しいことになっているかもしれない話がツボでした。

一見、露悪的なようで実は周囲に対する節度は守っている感じとか、幸せそうなんだけどどっか照れが入ってしまっている感じが好き。

本書に収録されてる部分で、いままでずっと漫画に登場していた猫さんたちのうちの1匹「ニャコ」さんが亡くなったり、そうかと思えば伊藤さんご本人の妊娠が分かったりと、変わらぬものってないんだなあと、ちょっぴりしみじみ。

ご出産については4巻以降で触れられることになるんだと思いますが、おめでとうございます。
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蛇蔵&海野凪子『日本人の知らない日本語 2』
外国からやってきた生徒さんたちに日本語を教える凪子先生の日常を描いたエッセイコミック2冊目。最初の巻と同様、面白かったです。

それにしても、日本語学校って、大変なんですね。私が通っていた中学は、わりと英語教育には力を入れていて、能力も熱意もある先生方がそろっていましたが、それでも母語とはまったく違う体系を持った言語を習い始めたばかりの日本人生徒たちの「素朴な疑問・奇問」に、こんなに親切には答えてくれてなかったと思います。「とにかくそうなっているんだから覚えてください」みたいな感じで。

だけど凪子先生は、時には「宿題にさせてください」といったん保留にしてでも、一般的な日本人は知らずに済ませちゃってるような、言葉の文化的・歴史的背景を整理して生徒さんたちの疑問を解決してあげるのです。「“スッパ抜く”の“スッパ”ってなんですか?」とか、「どうしてすべての音にそれぞれ違う文字を当てはめないで、カタカナやひらがなに濁音符(゛)や半濁音符(゜)を付けることになったんですか?」とか。

日本人感覚ではぶしつけと受け止められてしまいがちな「ストレートな質問」を避けて年齢などを「遠まわしな表現で探ってみる」というような勉強をする授業があるのも意外でした。そこまで面倒見てくれるのか。

とにかく今回、日本語や国ごとの文化の違いに関する雑学を楽しむ一方で、読んでていちばん強く感じていたのは、「凪子先生って、いい先生だわー」ってこと。どんな珍問が来ても馬鹿にせず、真剣な悩みには真剣に回答してて。

世界各国から来た、いろんな感覚が違うひとたちのあいだで、普段からさりげなく軋轢が起きないようにとりなしてクラスの平和を保っているんだろうなっていうのが垣間見えるエピソードも。

ところどころ挟まれている文章によるエッセイで「縁起もの」と題されたページがあって、生徒さんたちに自国の縁起ものを紹介してもらったら、ある国で縁起が悪いとされてるものでも別の国ではよい意味があったりした……というようなことが具体例を挙げて書いてあるんですが、その締めくくりが

世界中調べてみれば、どんなものも何かしら、「縁起のいいもの」になっているのかもしれませんね。

となっていて、こういう発想って、すごくしなやかでいいなあ、と思ったのです。そういうふうに、生徒さんたちのことも、おおらかに柔軟に受け止めていらっしゃるんだろうなあって。
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紺條夏生『妄想少女オタク系』第6巻
相変わらず、浅井さんと松井さんは全力投球で青春真っ只中って感じです。やってることはオタク活動なんだけどな!

阿部くんも相変わらず絵に描いたような(いや実際マンガですけど!)直線思考な熱血少年で愛しい。浅井さんはやっぱり、まだまだ悩んでしまってますが。そのお悩みがオタクな創作活動の糧になってしまうのが、たくましいというか頼もしいというか。

松井さんと千葉くんのカップルも、両想いになっちゃったあとの、かえってどうにも感情が暴走してしまうような、せつない感じがよかった。しかし千葉くんは、オタクな女の子にとっては、かなり理想の彼氏じゃないか? 裏ではイライラしてたりもするんだけど、それでもオタクなイベントが近づくと「邪魔したくねーから」と放置プレイされても健気に我慢して、会ったときには屈託なく笑顔を見せてくれるんですよ! 自分はオタク活動関係ないのに! いやはや(家族に鍛えられているとはいえ)お若いのに人間ができている。浅井さんと阿部くんがらみの騒動でクラスの雰囲気がおかしくなったときの、とっさの空気の変え方も上手くて、大人ぶらないのに大人です。

そしてやっぱり気になるのは、百瀬さん。前の巻に引き続き浅井さんたちに対して悪意を表出させてマズい方に行っちゃってます。でも作者はこの百瀬さんのことも、傷つきやすくだからこそ虚勢を張ってしまう繊細な面を描いて根っからの悪い子にはしていないのが救い。いずれこの子も、浮上して軌道修正して自分に合う友人たちを見つけて楽しく過ごせるようになってほしいなあ。

巻末の「おまけまんが劇場」によると、次の第7巻が最終ということなので、その最後の1巻で、ぜひともそういう展開になることを祈っています。

【関連記事】
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あべかよこ『はじめて家を建てました!』
マンガ家の妻とグラフィックデザイナーの夫のフリーランス夫婦が、思いがけなくも奥さん側の実家の土地に二世帯住宅を建てて奥さんの両親と同居することに。

まるっきりなんの予備知識もなかったところから、展示場巡りとモデルハウス見学、複数のハウスメーカーでの設計図作製と見積もり検討などなどを経て、徐々に住みたい家のイメージを具体化させてゆき、ついに新居が完成してお引越しをするまでを、途中で専門家のお話も挟みつつ、分かりやすくマンガで伝えてくれています。

いろいろ豆知識が得られました。ま、現実には、私たちの場合はすでに住宅ローンを背負ってしまっているので、いまさらそういった知識を仕入れても、差し当たり今後に役立てることができるわけではないのですが。

でも読みながら、自分たちが土地探しや設計図の検討をしていたときのこととか(絶対ムリと思っていた地域でリフォームすればよさげな中古物件を発見するまでは新築するつもりでした)、資金計画を考えていたときのこととか思い返してしまった。あんまりきっちりあれこれ理解してるわけじゃなかったけど一応ものすごい地雷を踏むということはせずにすんだっぽい? と胸をなでおろしたりして(笑)。

あと、著者のおうちが二世帯住宅ということなので、同じく二世帯同居をする身(うちは夫側の両親とだけど)として、野次馬根性で間取りを拝見できて単純に楽しかったです。ちなみに、最初に著者の旦那さまが自分の趣味の部屋にするつもりで取り入れようとしていた(そして最終的には却下することになった)「小屋裏3階建て」。うちの家がまさにそれです。ははは。やっぱり、夫の趣味部屋になっとるよ……。

職人さんたちともどんどん積極的に交流して、引き渡しのときには現場監督さんの涙まで誘ってしまう、頼もしくもあったかい著者のお母さまのキャラが素敵でした。

家を買うというのはそれなりにリスキーなことだし、賃貸生活のメリットや魅力(これは私にとってはけっこう大きかった)を手放すことにもなるわけですが、覚悟を決めて「自分たちの家」で暮らしていくということに対する前向きな気持ちも、改めて思い出すことができました。
Posted at 09:14 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
益田ミリ『週末、森で』
都会を離れて田舎で暮らし始めた翻訳家の「早川さん」と、ちょくちょく週末に遊びに来るお友達の「マユミちゃん」、「せっちゃん」のやりとりを中心にしたマンガです。

早川さんは田舎に来たと言っても、いきなりロハスや自給自足に目覚めたわけでもなく、近所にスーパーがないので野菜は通販でお取り寄せだし、東京からのお友達がおみやげに持ってくるメジャーなお店のお弁当やお菓子を「わかってらっしゃる」と喜びます。

住んでる家だって、自然のど真ん中じゃなく駅のど真ん前で、お友達が来ると自動車に乗って、近くの森まで一緒に遊びに行くのです。

それでも、喧噪を離れて無理のない範囲で自然に親しみながら暮らす早川さんの何気ないひとことが、平日になって都会での会社仕事に戻ったマユミちゃんやせっちゃんにとって、息苦しさをやわらげるための、小さなヒントとなったりするのです。

うーん。これはなあ。早川さんは、とっても「できた」ひとだし、このマイペースかつたくましい、地元のひとたちとも交流しつつ自分の領域はしっかり守っている田舎生活は、考えようによっては理想的で、そういうことを実現できちゃう彼女はすごいんですが。

早川さんにアフォリズム的なことを言われて、都会で日々の雑事に追われてあくせくしているお友達があとからそれを思い出して何かに気付く……みたいなパターンが何度も何度も何度も繰り返されていくうちに、むしろなんていうか、ひとりだけ都会の勤め人生活から早々と「一抜けた」している人に俯瞰的に悟ったような「正論」を言われて、ちゃんと素直に受け止められるマユミちゃんとせっちゃんもやっぱり人間できてるなあ、と感心してきてしまった。そんなことを思ってしまう私の性格が悪すぎとういか、個人自営業をやってた頃、なんか言っても勤め人のひとに「あなたには分からないでしょう」的な対応をされることがちょこちょこあった私の人望がなさすぎって気もするけど(笑)。

まあつまり、この3人は、長らく友達やってきただけあって、一見タイプが違うようでも、結局のところ価値観的には似たもの同士なんですね。そういう友達関係は、素敵だと思います。

とりあえず、早川さんの健全さとバイタリティは(正直あんまり羨ましくはないけど)すごい。本業の翻訳の傍ら、着付けの先生やったり近所の中学生の家庭教師をしたり。動植物の知識もぐんぐん増やして、山歩きもマスターし、カヤックも操れる。私が田舎で一人暮らしで在宅労働してたら、きっと不健康だなと思いつつも、いまよりさらに引きこもって余暇はついついインドアなオタク的趣味に費やしてしまうに違いないよ……って、そこが私の人望のなさの所以か!
Posted at 10:23 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
西原理恵子『西原理恵子の太腕繁盛記 FXでガチンコ勝負!編』
前に読んだ『この世でいちばん大事な「カネ」の話』でもちょっと言及されてた、西原さんが金融商品に手を出して資産運用に挑戦するという企画。

駆け出しだった頃の『まあじゃんほうろうき』においてさえ、身銭を切って体験しないと作品として面白くならないと自分の持ち出しでリスクを負った西原さんですから、もちろん今回も、アトリエを建てるために貯めた一千万円をどどーんと投入。そして、最終的には、見事にすべてを失うことに。それどころか、そもそも企画を持ち込んだ側のFX会社もつぶれてしまいます。

『この世でいちばん大事な……』の感想でも書いたように、私自身は本当にローリスクローリタン志向の人間です。資産(と呼べるレベルでもないですが)運用なんて言ってもせいぜい、ある程度の貯金ができたら、まるっと定期にしておくべきか、それとも咄嗟のなにかに対応できるように普通口座にも残しておくべきか……くらいのことしか考えられません。

ですから、こういうものに手を出すひとの気持ちは一生理解できないと思うのですが、西原さんの「負け方」はさすがにきれいで潔いよなあと感心しました。企画発案者の青山氏ともよい関係が築けているようで『まあじゃんほうろうき』のときによい人脈が得られたのと同じパターンでしょうか。

まあ、熾烈でアクの強い人生を歩む西原さんに《最近の若い子は(中略)給料はこのままでいいから、定時に帰って家で自分の好きなことをやる、そんな子ばかり》とか、《昔の人は、バクチで負けた責任を取る=首くくる」だったけど、今の人は違う》とかちょっと感心しないよね的な口調で言われると、「そのとおりですが、何か」と言いたい気持ちも湧いてきちゃったりするんですけどね。

あ、青山氏が経営している別会社のチェーン店で出してる火鍋はすごく美味しそう。いつか食べてみたい。
Posted at 10:39 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
蛇蔵&海野凪子『日本人の知らない日本語』
サブタイトルは、「なるほど〜×爆笑!の日本語“再発見”コミックエッセイ」。

日本語学校で外国から来た人たちに日本語を教えている海野さんの日々の体験が、蛇蔵さんの可愛らしい絵柄でまんが化されています。

生徒さんたちは、出身国もバックグラウンドもさまざま。日本語を一から学ぶ上での、それぞれのお国柄にまつわる面白いエピソードに加えて、日本人でも知らない人は知らないよねーというような日本語の豆知識も紹介されています。

初っ端から、外国人就学生のアルバイト先は飲食店(特に言葉が不自由でも大丈夫な洗い場)が多いので、食器類に関するマニアックな質問が多いという話に、なるほどと納得しつつ、これまでそういう事情って考えたことなかったなあ、と引きつけられます。「とんすい」って、恥ずかしながら私、知らなかったよ! 一般的な国語辞典にも載ってないことないですか!? でもウェブで検索してみたら、ちゃんと出てきた。「呑水」って書くんですね。

助数詞の章では、「中国では川も蛇も同じ『条』で数えるのに……」とへなへなする中国人学生さんに、「うんうん、私も中国語教室では、最初そこんとこの感覚の違いにへなへなしたよ」と共感したりもしました(笑)。

まんがとして面白く読めるようにネタを選りすぐっているんだろうけど、生徒さんたちもそれぞれ個性的。母語はとっても上品なのに、大好きな任侠映画に染まって姐さん言葉になってしまったフランス人マダムと、黒澤映画に憧れ武士言葉をマスターして来日したスウェーデンのお嬢さんの会話なんて、ほんとこっそり聞いてみたいよ。

そして、日本語を勉強するきっかけも理由も本当にいろいろなんだなあ、と。日本の常識を知らないために病院へのお見舞いに「可愛いブーケ」だと思って仏花を持って行ってしまったりもしちゃうこの人たちが、あまり頭のカタすぎる日本人に出くわさず平穏に日本での生活を送って、日本を好きなままでいてくれますように。

それから、私も改めて、意図的にくだけた言葉遣いをしてるとき以外では、無意識であんまり妙な日本語を使ってしまったりしないよう、気をつけねばと思いました。

ただ、本書でも少し触れてありましたが、「正しい日本語」と「世間一般で使われている日本語」が乖離してきているのは、辛いところですね。

まんがの合間にちょっとしたエッセイや「日本語テスト」のページが入っているのですが、たとえば助数詞のテストの答え合わせで、山は「一座、二座……」と数え、宝石は「一顆、二顆……」と数えるのが正しいと言われても、平均的な日本人相手だと実生活ではけっこうな割合で「はぁ?」って言われちゃうんじゃないだろうかという気がしてなりません。それがいいことなのか悪いことなのかはさておき。
(私もじつは「座」は初めて知りました、すみません。日本語では高山を数えるとき限定の助数詞なのに対して、中国語の量詞だと、どしーんと大きくて動かないもの全般を「座 zuo」で数えるので、なるほど、もとは一緒だったんだろうなあ、と面白かったりしたのですが。)
Posted at 20:31 | permalink | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark
いなだ詩穂『ゴーストハント』第11巻
10巻が出たのっていつだっけ? と自分の読了リストを確認してみたら、去年の4月だったよ。ちなみに、その前の2007年には1冊も出ず、9巻が出たのは2006年2月。雑誌連載じゃないから、刊行ペースが予想できないんだよねえ。

原作の「悪霊」シリーズをひととおり読んでいるので、このあとの急転直下な展開も知っているわけですが、だからこそ、麻衣があらためてナルのことを「好きだなぁ」と思うシーンと、ナルが麻衣に「おつかれさん」というシーンとで、なんかぐっと来るものがありました。「好きだなぁ」と思うときに麻衣が思い浮かべる「ナル」の表情……やっぱこう描きますか。

麻衣の頑張りに対してせっかくねぎらいの言葉をかけるのに、無表情で決して目を合わせないナルも好きだけどな(笑)。
Posted at 00:03 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
二ノ宮知子『のだめカンタービレ』第22巻
発売されてすぐのときに読んだんですが、いままでコメントしそびれていました。そんなこんなしているうちに、すでに雑誌連載は最終回を迎え、今月中に次の巻(これが最終巻?)も出てしまうらしいですね。でも私はまだその内容は知りません。だからこれから書くのはあくまでも、8月に22巻を読んだ時点での感想です。

のだめバーンアウトの巻。いや、その前にのだめ大々的にデビュー、が来るんですが。

ピアノの才能はあっても、音楽の世界で名前を売っていきたいという意欲がないのだめ。彼女を大きな舞台に立たせたいと思う、千秋先輩をはじめとする周囲。

自分の気分のノリに合わせて楽しく弾いてるだけで、きっとのだめは幸せに暮らしていけるし、周囲からの期待を負担に感じるのも分かるんだけど、ファンになっちゃった側としては、そりゃ表舞台に立たせてみんなに聴かせてシェアしたいよねえ、というのもすごく分かる。自分ではできないことだけに、本人がその気になってくれないことが、もどかしい。

千秋先輩は、のだめのことを恋愛相手として見る以前に、音楽の才能に惚れこんじゃってるので、公私すべてひっくるめてのパートナーとしては複雑な立場だよなあ。

結局どういう結論になるのか、気になるところです。
Posted at 23:53 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
よしながふみ『大奥』第5巻
綱吉の時代。生類憐みの令、赤穂浪士討ち入りなどの史実が「人口比の極端な不均衡によって社会的役割が男女逆転しているパラレルワールド」という設定にかっちりと矛盾なく組み込まれていて、構成の端正さに舌を巻きました。

第1巻を初めて読んだときには「うわー、男女逆転で大奥かー、すごいなー」と単純に楽しんでいたのが、読み進むうちにだんだんと、そう単純な逆転劇でもないのだということが分かってきて、この巻ではついに、その「単純でなさ」が全開といった感じです。着実にエピソードを積み上げてもうひとつの江戸時代を成立させてきたこの物語で、「忠臣蔵」の浪士たちが、現実の史実どおりに男性であったことに意表を突かれつつ、その流れの皮肉めいた自然さに感嘆しました。

男性のみを襲う謎の疫病という、人知ではどうしようもない要因に押されて政治のトップに立つのが女性となっても、なんだかんだ言って男女の意識は結局のところそう急激には変わらず、そして血筋が重要視される社会で「産む」側の性であるかぎり、女性に求められるのは最終的にはそこだけになってしまうという、その怒りにも似た絶望感、やるせなさ、追い詰められるような閉塞感が、綱吉を通じて執拗に描かれます。しかしこの巻の終盤で登場する少女時代の吉宗が、そこに風穴を開けている。これでそろそろ次の巻からは、第1巻の内容につながるのかな?

とにかく、読ませる作品ではあります。ただ、あまりにもストーリーテリングが巧みなので、本来ならものすごく残酷な、目をそむけたくなるような展開が続いているはずなのに、心を痛める前に感情移入が留保されてしまい、いちばん前面に来る反応が「なるほどこうなるか、面白いなあ」という、俯瞰的な目で見た「感心」になってしまうのが、なんだか読んでてうしろめたい気もします。
Posted at 08:57 | permalink | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark