森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
(角川文庫,2008年12月/親本2006年11月)
【Amazon.co.jp】


単行本が出たとき、あちこちですごく評判がよくて気になっていたのですが、なんとなく読みそびれていたら、なんと2年で文庫化してくれるとは!

なんせもう、ネット上のあちこちで話題の本でしたから、じつはいろいろ、断片的な情報を得てしまってて、なんだか読む前の私の頭の中には、すでにこの本の勝手なイメージが形成されつつありました。

とりあえず、おぼろげに念頭にあったのは

  • 京都の大学生が出てくるらしい
  • ちょっと硬くて古風な文体がかえってユーモアを醸し出しているらしい
  • 京都の具体的な地名がいっぱい出てくるらしい
  • けっこう荒唐無稽らしい
  • そんでもって、ホルモー! と雄叫びをあげるんですよね?(←万城目さんにも森見さんにも、たいへん失礼な勘違いでした。ごめんなさい。ちなみに『鴨川ホルモー』未読。)(←後日追記:読みました)
  • 非モテ系な男子と後輩のキュートな乙女のほのぼのロマンスらしい
  • なんかとにかく古本屋さんが出てくるらしい
  • 連作短編集らしい

――みたいなことです。特に最後の「古本」と「連作」というのが、必要以上に頭にこびりついており、いつのまにかなんとなく私の妄想のなかでのこの本は、「メガネ着用のもさもさした古本オタクな先輩と、『弟子にしてください、きっと古本漁りを覚えます!』と決意したオカッパ頭の不思議ちゃんな後輩が幻の稀少本を求めて、こまごまとしたマニアックなうんちくを傾けながら京都の町を古本屋さんから古本屋さんへと渡り歩いていると、薄暗い古本屋の奥から魑魅魍魎が出現したり店主が年齢不詳の妖怪だったりしてちょっとした事件が起こるようなシリーズもの(※)ということになってしまっていました。

えーーーーーーーーーーと。ぜんぜん、違うね……。

すみません(汗)。古本がキーになってるのは第2章だけで、しかも古本屋さんというより大規模な古本市だし。でもでもでも、古本市、いいよねっ! 血が騒ぐよねっ! 少年が「本はみんなつながっている」と言い出すとことか、やたら気持ちが昂揚しましたよ! って、いきなり第2章についてコメントしちゃってますが。

第1章の、夜の先斗町の雰囲気もよかったです。自分自身の記憶にある町並みを思い浮かべて、なんだか、本当に「ああいうこと」がありそうな気がしてしまったよ。第3章の学園祭の不条理なはちゃめちゃさも、自分が参加したときの「大学の学園祭」とは、決して似ていないのに、なぜかかつて自分も経験したことがある世界のように思えてきてしまう。最後のお話の迫力あるクライマックスにも引き込まれた。

そして、なんだかんだと鹿爪らしい物言いをしていても、語り手の「先輩」は結局のところ、大学生のオトコノコでしかないわけで。もうなにもかもすべてが、恥ずかしくも懐かしく愛おしい。

俗世離れした「乙女」は……どうなんだろ。最初のうちは「この子、年上のお姉さんには可愛がられるかもしれないけど、絶対に同年代以下で同性の友達いないだろ。ていうか、本人が必要としてないだろ」とか思っていたんだけど、そうでもないのかなあ。第4章で、風邪の看病のために玉子酒を作りに行ったら家に上げてくれるくらいの親しい友達は、「先輩」周辺やそれまでの事件がらみで知り合った年長者の人たち以外にもちゃんといるのか! と、なんか衝撃でした(笑)。

ついでに、夫が買ってきた漫画版も最初の2冊を読んでみましたよ。

夜は短し歩けよ乙女 第1集 (1) (角川コミックス・エース 162-2)夜は短し歩けよ乙女 (2) (角川コミックス・エース 162-3)
第1集【Amazon.co.jp】
(画:琴音らんまる/角川コミックス・エース,2008年3月)
第2集【Amazon.co.jp】
(画:琴音らんまる/角川コミックス・エース,2008年6月)

オリジナルのストーリーが多くてびっくり。あと、小説で読んでいたときには、すごく古風というかあっさり系の顔立ちというか、要するに小説文庫版のカバーのイラストそのまんまで想像しちゃってたヒロインが、漫画版ではちゃんと今風の萌えっ娘仕様(?)になっていたのも、びっくりでした。これはこれで悪くないんですが。ただただ驚いた。
ついでに言っとくと、この脳内ストーリーでは、主人公たちは週に1回だけ、同じ講義を受ける曜日にのみ顔を合わせるわけですよ。で、ふたりが徒歩で古本屋めぐりをするのは、講義が終わったあとの夕暮れ時から、古本屋さんの閉店時刻までのあいだなんですね。『夜は短し歩けよ乙女』というタイトルはそのことに由来しているのです。って、どうして1ページも読まないうちに、そこまで勝手に妄想するかなあ私。
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    コメント
    こんにちは。
    ならのさんの妄想最高!!(ゲラゲラゲラ)
    私はなんの先入観も予備知識もなく、乗り物に乗るのでひまつぶし・・・程度で購入しました。
    面白かったですね。乙女は、やはり妄想が爆走する大学生男子の目に映った乙女ということで、現実にはもっと地に足のついた方なのかも・・と思いましたです。なむなむ。「四畳半神話大系」も購入しましたが、未読です。そうだ、森見氏はつい最近めでたくご結婚されたようですよ。ご本人ブログにありました。

    ところで「鴨川ホルモー」も「鹿男」もなかなか文庫になりませんね。絶対文庫派(ハードカバーは買わない)としては残念なことです。早く文庫にしてくれー!
    • まりさん
    • 2009/02/21 9:22 AM
    まりさん、笑ってくれてありがとう。いやはや、先入観って恐ろしい。

    『鴨川ホルモー』は、えっと、2006年刊行かー。文庫化時期の目安は、単行本から4年、と前に聞いたことがあるような気がするので(だから、『夜は短し〜』が早くも文庫になってて びっくりした)、万城目さんの作品は、まだどれも文庫落ちしてなくて不思議はないんですね。
    でも私も、ハードカバーより文庫が嬉しい派です。

    森見登美彦さん、初めて読みましたが、独特で面白うございました。乙女はやっぱり、乙女の一人称で書いてある部分も男子側の妄想入ってんのかなあ(笑)。

    ブログ記事は私も先日、読みました。ご結婚報告の文章も作品世界そのまんまで面白かったですね。
    • ならの
    • 2009/02/21 8:59 PM
    私もならのさんの妄想に大笑いしました〜(^^
    人の妄想ってどうしてこうも楽しいのかしら。
    『夜は短し〜』、私も話題になってしばらくしてから読んだけど、残念ながら自分なりの妄想はしてなかったなあ。
    奥手の男のコに片思いされる不思議女子ってどうも女から見ると魅力のないタイプが多く、読み始めはちょっと警戒しちゃってましたが、読み進めるうちにどんどん乙女が好きになってしまいましたよ、私は。どうも「大酒のみ」ってトコロがポイント高かったみたいです。ただ後をつけるしかない先輩の、脳内議論も可愛くて好きでした。
    • To-ko
    • 2009/02/22 8:31 PM
    To-koさん、こんにちは。
    妄想ストーリーが思いのほか受けていてびっくりです。

    「乙女」は、私も嫌いじゃないんですよ。魅力的なところも分かるんですよ。あと、文庫版は羽海野チカさん巻末解説イラストが入っていて、そのページの乙女がめちゃくちゃキュートでした。ただ、独自の世界を確立している人なので、いい悪いいじゃなく、とにかく女友達とつるんでいるようすがまったく想像できていなかった(笑)。

    自分だけのなかであれこれ考えをめぐらせまくっている「先輩」は、すんごいカワイイですよね!
    • ならの
    • 2009/02/23 12:57 PM
    とかなんとか言ってたら、『鴨川ホルモー』、今週文庫版発売ですよ!>まりさん

    http://www.amazon.co.jp/gp/product/4043939019/
    • ならの
    • 2009/02/23 10:52 PM
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