有川浩『フリーター、家を買う。』

タイトルから想像していたのとは、ずいぶんと違うお話でした。

どんなのを想像していたのかというと……最後まで読んでしまったあとではもう当初のイメージはぼやけてしまいましたが。たぶん、フリーターなのにひょんなこと(ってなんだ?)から住宅ローン背負うことになってしまった主人公が資金繰りに悩みつつ四苦八苦するさまを追いながら、日本の住宅事情やローンの仕組みに関する豆知識なんかも楽しく学べちゃう青春どたばたコメディ、みたいなのを思い浮かべていたんじゃないかと。

実際には、読む前の予想よりもはるかに、主人公とその家族が直面した事態は深刻なのでした。そしてまた、家を買うことは話の発端ではなく、ゴールであり目指すべき生活の象徴なのでした。

しかし、フリーターどころか物語の冒頭ではぐだぐだの自己中ニートに成り果てていた主人公が、徐々に強くなって世間の荒波に乗り出していけるようになってきてからは、とんとん拍子に物事が転がり始めます。この辺がね、なんだかもう夢のよう。性善説にもほどがある(笑)。

でも、この主人公、たしかにすごく頑張っているんですよね。そして、物事がどんどんうまく行っちゃう後半の展開は、その頑張りが周囲に正当に評価されたからなんですよね。

だから。決して諦めずに、愚直なまでにこつこつと真面目に前向きに頑張りつづけていれば、なんかきっと、そのうちいいことあるんじゃないか……そんなことが、このお話を読んでるあいだは、信じられてしまう気がしてくる。そしてまた、そんなふうに信じて生きていくことも、悪くないなあって思えてきてしまう。

少なくとも、こんなふうに都合がいいのはフィクションだけだよって、現実世界で経験している物事の転がり方のぎこちなさや間の悪さに思いを馳せて落ち込むよりは、能天気に「こういうのも悪くないなあ」って思っておくほうが、ずっとお得だよね、と、なんだか自分に言い聞かせたくなる感じ。
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    • 藍色
    • 2010/12/18 2:21 AM
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    「母さん死ぬな―」へなちょこ25歳がいざ一念発起!? 崩壊しかかった家族の再生と「カッコ悪すぎな俺」の成長を描く、勇気と希望の結晶。 町内でのいじめ、家庭内不和、困難な就職、精神疾患と重い出だ...
    • 粋な提案
    • 2010/12/18 2:18 AM

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