ケイト・モートン『リヴァトン館』

武田ランダムハウスジャパン
(2009-10-16)

(翻訳:栗原百代/原書:Kate Morton "The Shifting Fog" 2006, のちに "The House at Riverton" と改題)

去年の夏に読んだ本ですが、今頃。

先に "The Forgotten Garden"(2011年2月18日に邦訳が『忘れられた花園』として発売予定) を読んでとても面白かったので、すでに翻訳が出ている同著者の作品を探したのでした。

老人ホームで過ごす98歳の老女グレイスが回想する、14歳のときからメイドとして仕えていたお屋敷でのある事件の知られざる全貌。

期待どおりの、濃密な本でした。これが第1作ってすごいなあ。

"The Forgotten Garden" と同じく、キラキラとした才気と活気に満ちていた個性的で魅力的な女の子が、成長するにしたがって、その時代の社会の価値観や残酷なめぐり合わせに翻弄されて、じわじわと型にはめられ、破滅に向かって追いやられていくさまが、痛々しい。

たった一度の、なんの悪気もなくただわざわざ訂正せずにおいた、とてもささいな勘違いが、何年もの月日が経ったある日、悲劇につながる最後の引き金を引いてしまうという、とても残酷な物語。

しかし読み手である私のほうは、その残酷さにさえ魅せられて、「その瞬間」を危惧しつつ、息を詰めて次々とページをめくってしまう。そしてその反面、ひとつひとつのシーンのディテールの書き込み、時代の移り変わりの描写がとても丁寧なので、じっくりと味わいながら読み進めたくもある。贅沢なジレンマだなあ。

ただ一人、真相を知るグレイスのその後の日々も、時代とともに流転する波瀾万丈なものであったことが察せられます。最終的には、そう悪い生涯でもなかったらしいことが垣間見える記述にホッとしつつ、そのつかみとった人生自体が、悲劇を踏まえたうえで成り立っていることも事実。やはり彼女が若いときに経験したその「事件」の重さ、やるせなさは、常にどこかに影を落としていたに違いないと思うと、身をよじりたくもなる。

そしてまた、ほぼ1世紀を生き抜いたそんなグレイスも、やがてはぷつりとこの世に存在しなくなるだろう、ということを考えざるをえなくなってくる。しかし世界そのものは、より若い者たちの手に残されて存続していくのです。

そういった《時間》の重みが、ずっしりとした質感と手応えをもって感じられるような気がするお話でした。
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