虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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2015年8月〜9月に読んだものメモ
  • 原田実『江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統』(星海社新書,2014年8月)
     江戸しぐさ検証本。断片的にこういう矛盾点があるって話とかはネットで見ていたけど、一気に列挙されると壮観。私は2004年の公共広告機構のやつで知って、その時点ではマナー啓発のための創作というのが共通認識なのだと受け止めており、それがいつのまにか史実扱いで教育現場に食い込んできてるのが問題なんだとばかり思っていたのだけど、実はそのずっと前から真面目に提唱されていて、そこに思惑を持って乗っかった人たちがいたのだというのは本書で初めて知った。江戸しぐさの内容が、創始者や追随者たちの思想や経歴に呼応しているという裏づけなどは、不謹慎だけど正直なとこ読んでて少しわくわくした。なにかこう、あるひとつの独立した並行世界が出来上がっていく過程を逆回しで見せてもらうような。でもまあ、あれを容認していては駄目だよね、と史学科出身者としては言っておく。

  • 鏑木蓮『イーハトーブ探偵 山ねこ裁判 賢治の推理手帳 II』(光文社文庫,2015年7月)
     宮澤賢治が探偵役のミステリ短編集、第2弾。今回は全体に物理トリックよりも心理トリック寄りのお話が多かったかな。作中の年代が具体的に設定されており、その時期に賢治が書いていた童話が、推理のとっかかりになっていくのが面白い。賢治の「科学者」としての側面と「作家・詩人」としての側面が両輪となって、困っている人たちのために謎が解かれていく。前作から時間が進んで、妹を亡くしどこか壊れた感じになった賢治を見守ろうとする親友の嘉藤治の視点がせつない。

  • エリカ・ジョハンセン『ティアリングの女王(上)』
  • エリカ・ジョハンセン『ティアリングの女王(下)』
    (訳:桑原洋子/ハヤカワ文庫FT,2015年5月/原書:Erika Johnsen "The Queen of the Tearling" 2014)

     三部作の一作目。森の奥で密かに育てられた女王の娘が19歳になって定められたとおり戴冠を目指すが、そこまでもそれからも生命を狙われつづける。摂政の支配下で腐敗した国を建て直すことはできるのか。
     決して万能ではないけど目の前の理不尽な状況に対する怒りを誤魔化さないまっすぐな正義感で突き進み、周囲の大人たちに導かれつつも彼らを従えていくヒロインの姿に胸がすく。「こっち側」の世界とのつながり方に少しユニークな設定が入った世界観が興味深く、想像をかき立てる。
     カバー折り返しによるとエマ・ワトソン主演で実写映画化が決まっているそうなんですが、キャラ的には、意志の強い聡明な年若き女王さま、すごくハマりそう。ただ原作では容姿にコンプレックスのあるぽっちゃり娘なので、そこに起因するエピソードはそのままやったら説得力なさそう。


  • 岸政彦『断片的なものの社会学』(朝日出版社,2015年6月)
     特定の意味を持たないからこそかけがえのない、すくい取りがたい一瞬の繊細ななにかを、善悪の判断をすることなく、ただそっと写し取る、みたいな感じの文章がひたひたと打ち寄せるように連なっていて、なんだかとても静かな気持ちで読み終えた。

  • ジョージェット・ヘイヤー『公爵シルヴェスターの憂い』(訳:後藤美香/MIRA文庫,2013年7月/原書:Georgette Heyer "Sylvester" 1957)
     原書は1957年発表。偏屈気味の公爵と、お転婆で口が悪く実はこっそり冒険小説を商業出版しているご令嬢が、最初は反発しあいつつ、途中で誤解も挟まりつつ、徐々に歩み寄る王道展開ヒストリカルロマンス。楽しい。
     ご令嬢が、第一印象最悪だった公爵がモデルの悪役キャラを商業出版デビュー作に登場させてしまい、それが必要以上に原型を留めていたため社会的制裁を喰らう展開は、公開コンテンツでの実在人物の取り扱いには注意せよというネット民への警笛にも、って1957年にインターネットないけどな!(ないよな?>1957年にネット。って、急に自信なくなってきて確認した。現在のインターネットの原型と言われるARPAnetの登場が1969年。よかった、なかった。)


  • Kate Morton "The Secret Keeper"(Mantle,2012年10月)
     戦時中のイギリスの女性たちの生活とか細かく描写されていて興味深い。自分が生まれたときから自分の親だった相手に対して、子供はあんまり深く考えずに来ちゃうことあるけど、実際には親にもそれまでの自分の人生ってものがあるよねっていうのもすごい心に刺さる。
     読んでるうちに、そこはかとない違和感がじわじわ湧いてきて、もしかしたら……でもそれ、2011年に調査してる主人公には分かりっこないよな……って思ってたら、ああ、そういうかたちで判明して、最終的にそこまで作中でフォローが入って穏やかな気持ちで読み終えられるようになってたのか! って感心した。
     邦訳版は、ケイト・モートン『秘密』〈上〉〈下〉(訳:青木純子/東京創元社,2013年12月)。


  • Cixin Liu "The Three-Body Problem"(訳:Ken Liu/Tor Books, 2014年11月/原書:劉慈欣『三体』重慶出版社,2007年)
     今年のヒューゴー賞受賞作。予備知識なしで読み始めたらいきなり冒頭が文化大革命真っ最中でびっくり。とある登場人物とレイチェル・カーソン『沈黙の春』との出会いなどを経て、舞台が現代に移り、過去への言及や謎のオンラインゲームを挟みながら突然、SF的展開が始まる。
     後書きを読むと著者は現実の社会問題とフィクションの関連付けを嫌う人みたいなんだけど、「人類のなかに、自身を含めた人類そのものに絶望している者たちが多数存在する」ということが前提になってる流れに、ずーんと来るものが。この巻では異星人の内情、地球人に対してあけっぴろげすぎ……? という印象があったが、続編冒頭を読むと、そのへんにも理由づけが。


  • まんしゅうきつこ『アル中ワンダーランド』(扶桑社,2015年4月)
     女性のアル中体験談って読んだことないやって思って手に取ってみた。「面白くあらねば」を自分に課してしまう人は大変だな。あと、変に身体にアルコール耐性あるのも(ウイスキーを1日で1本という生活で血液検査に異常が出ないって!)。しかし「これがデフォだから面白がられなくても平気」という自己認識の私は、傍目にはつまんないやつなんだろうなとも思った。まあ小心者なので、修羅を経験するよりは、このままでいいです……。
     ちょっと気になったのは、この本がまだ断酒を始めてからそう年月が経ってない段階で書かれており、さらに巻末鼎談で、アルコール解禁してそれをネタにまた本を出してもいい、みたいなことを冗談にせよ言ってらっしゃるあたり。なんか危うい感じがして怖い終わり方。


  • 杜康潤『孔明のヨメ。』第5巻(芳文社,2015年9月)
     伏龍と鳳雛が覚醒し始めるの巻。どんどん情勢はきな臭い方向に進んでいくのですが、それをきちんと描いてはいるのですが、それでもほんわかムードが維持されているのがこの作品のユニークさですね。あと新しい巻が出るたびに言ってますが、やっぱり士元さん好きだ! 三国志をもとにした漫画作品はいくつか読んできましたが、ここまで士元さんにツボを突かれているのは初めてです。
Posted at 20:09 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
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