虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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2016年1月に読んだものメモ
年明けから、感情を揺さぶられるようなできごとが次々と押し寄せたため、「2016年が始まってもうずいぶん経ちましたね」みたいな気分になっていましたが、まだ最初の1ヶ月が過ぎたところでしたか。「今年の1冊目」を読んだのが、すごく前のことのように感じられる。

パディントンは、今月日本公開された映画も観て来ました。楽しかった! 現代的なアレンジもされていたけどパディントンはやっぱりパディントンでした。


  • 東山彰良『流』(講談社,2015年5月)
     これ絶対に私が好きなやつだと思って、今年の1冊目に取ってあった。台湾出身、日本在住の著者による、第153回(2015年上半期)直木賞受賞作。舞台が1970〜80年代の台湾なのと現代日本の言語感覚から少し乖離したような文体なのとで、ときおり翻訳小説を読んでいるような錯覚に陥りそうに。見えない未来に焦る、突っ走りと混乱に満ちた若者の成長譚であると同時に、主人公の祖父の死に媒介されて、ふたつのルーツを持つことの意味や、上の世代の過去の重みがずっしりとのしかかる。ほんの数十年のあいだにも、歴史はぎゅるんぎゅるん動いていくし個人はそのなかで精一杯生きていくんだなあ、みたいな感慨があった。

  • 姫野カオルコ『謎の毒親 相談小説』(新潮社,2015年11月)
     相談投稿文とそれへの回答という形式で語られる、いまは亡き両親の不可解な、思考の経緯が読めない言動の回想とそれに対する考察および解釈。これ本文をすべて読み終わったあと奥付を予想してページをめくると出てくる一文("本書の「投稿」は……")がいちばん衝撃的だったかも。それはそれとして、まだまだ視野を広げる力がない子供の頃に、思いも寄らぬ大人の反応に戸惑い、世界そのものが揺らぐほどの困惑を覚えた記憶は、ここまでの理不尽にさらされてはいない私のなかにもたしかにあって、鮮やかによみがえってきて息が詰まった。その息が詰まる感覚を頼りに主人公の視点を追体験していったが、主人公の言い分をきちんと読んで誤魔化すことなくまっすぐに受け止め、ああでもないこうでもないと謎解きをしようとしてくれる複数の他者に出会えたことで、ほぐれていくものがあることは想像に難くない。僭越ながら、そういう物語をつむぐことが著者にとってもなにがしかの昇華や救済になっているのなら、読者としても救われると感じた。また、主人公が(そして巻末の記述を踏まえたうえで著者が)さまざまな出会いを経て自立しここに至るまで生き延びてきた道のりを思った。

  • マイケル・ボンド『パディントン街へ行く』(訳:田中琢治,松岡享子/画:ペギー・フォートナム/福音館文庫,2006年7月/原書:Michael Bond "Paddington Goes to Town" 1968, Illustrations by Peggy Fortnum)
     シリーズ8冊目。7冊目までしか出てるの知らずにいたので、いまごろ。ものすごく久々だったけど、そうそうだいたいどのエピソードもこんな感じでしたね。純粋な善意と斜め上の勘違いで大ドジ踏んでも、きっと最後はうまくいく。うまくいくの分かってても、大人になってから読むとちょっと途中が居たたまれなさすぎてしんどい部分はあったかなー。子供の頃はこれをけらけら笑って読めていたんだよなあ。クマが歌うクリスマスキャロル聴いてみたい。

  • マイケル・ボンド『パディントンのラストダンス』(訳:田中琢治,松岡享子/画:ペギー・フォートナム/福音館文庫,2007年9月/原書:Michael Bond "Paddington Takes the Air" 1970, Illustrations by Peggy Fortnum)
     シリーズ9冊目。なんだかんだ言っても、新しく気になったものに即座に手を出すパディントンのバイタリティはすごい。レンタルの夜会服、パディントンのサイズに合わせてお直ししちゃって、お店としては大丈夫だったんだろうか。

  • マイケル・ボンド『パディントンの大切な家族』(訳:田中琢治,松岡享子/画:ペギー・フォートナム/福音館文庫,2009年9月/原書:Michael Bond "Paddington on Top" 1974, Illustrations by Peggy Fortnum)
     シリーズ10冊目。カリーさんはつくづく学習しないね。そしてついに、これまでパディントンのセリフのなかで語られるのみだったルーシーおばさんが実際に登場。この情報を得て「未読の分を読まねば」と思ったのです。なかなかの大人物(クマだけど)。そして甥っ子とはまた違う感じでマイペース。ルーシーおばさんは、『刑事コロンボ』における「うちのカミさん」みたいな、最後まで決して実際には出てこないキャラなのだとばかり思っていたよ。

  • Shanna Swendson "A Kind of Magic (Fairy Tale Book 3)" [Kindle版] (NLA Digital LLC, 2015年11月)
     妖精の血を引くバレリーナと舞台女優の姉妹が頑張るシリーズ3冊目。前作でやっと自分の人生を謳歌できるようになった姉がキャリアを取り戻す絶好のチャンスをつかんで意気込むなか、またまたニューヨークの街に不穏な気配。人間界での覇権を狙って妖精界にちょっかいをかけているらしい魔女の思惑は本当にそれだけなのか。
     恋愛模様に関しては、これまでの障壁が取り除かれ、じれじれながら事態が進展しつつある姉、無邪気にほんわかムードだったのが現実を突きつけられて悩み始める妹――と立場が逆転。
     アーバンファンタジーだけど伏線を散りばめて謎解きさせていく作風は相変わらず。そしてやっぱり、主要な登場人物たちがみんな、地に足がついてるというか、それぞれに自分が守るべき領分があって矜持を保っているのが好きだ。あとしつこいようだがブルドッグ可愛い。


  • Shanna Swendson "Rebel Mechanics: All Is Fair in Love and Revolution" [Kindle版](Farrar, Straus and Giroux, 2015年7月)
     19世紀にしていまだ英国支配下にあり、魔力を持つ貴族層と持たない平民層に分かれた階級社会が続くアメリカで、魔術の代替としての蒸気機関の開発をおこない政府への反逆を試みる平民技術者一派と、彼らをこっそり経済的にサポートする覆面盗賊集団が暗躍する歴史改変スチームパンクファンタジー、開幕編。田舎から大都会ニューヨークに出てきて良家の女家庭教師の職を得たヒロインは、期せずして両者の活動に巻き込まれる。彼女の出自の謎も今後の展開に大きな意味を持ってきそう。たいへん面白かったです。ただし恋愛方面ではヒロインが途中で大迷走するのでロマンス的カタルシスはちょっと微妙かも(同じ著者の魔法製作所シリーズの1巻目でやはりヒロインが本来のヒーローとは違う人といったんくっついたとき、ロマンス小説読みの知り合いが「これはない」と否定的だったので)。しかしとにかく舞台設定と、おそらく最終的なヒーローになるのではと思われるキャラが、とても魅力的。
Posted at 14:01 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
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