虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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2016年4月に読んだものメモ
  • 沖藤典子『老妻だって介護はつらいよ 葛藤と純情の物語』(岩波書店,2015年8月)
     突然重い病気が発覚した夫を看取るまでの、いわゆる「老老介護」の日々を、かなり大胆に本音で書き綴った体験記。決して順風満帆にやってきた夫婦ってわけではなかっただけにさまざまな葛藤があるんだけど、基本的にこのかみ合わなさとか、その背後にある長年の夫婦間のわだかまりとかは、私らの世代よりずっと強固なプレッシャーとなっているであろう、家父長制・夫唱婦随的価値観のせいなんだよなあ、たぶん。現実に一人で通院できてる夫に、仕事のある妻が付き添わなかったというだけでお医者さんから叱られるなんて、これおそらく男女が逆ならないよね……。
     とにかく妻の立場からのみ書かれているので、本書に登場させられた周囲の人たちには別の言い分もあるだろうとは思うし、読んでてかなり嫌な気持ちになるところもあるんだけど、どう考えてもいちばんしんどかったのは、渦中にいるとき気持ちのガス抜きすら非難される状況に置かれていたこの著者なのでなあ。そして最終的にはそんなもやもやも浄化されていくわけで、何十年も連れ添った夫婦というのは複雑で不思議なものですね(と、今月やっとこさ結婚18周年だった私が言ってみる)。


  • 乾石智子『竜鏡の占人 リオランの鏡』(角川書店,2014年8月)
     視点人物の一人が情状酌量の余地なく魂の病んだ「悪者」として一貫したまま話が進んでいくので、もう一人の主役の素直な成長ぶりに癒されてた。それぞれのキャラの特性を敢えて複雑にせず特化してテンポを速めている感じ。各地の民の文化描写が楽しい。

  • 乾石智子『双頭の蜥蜴(サラマンダー)』(講談社,2015年8月)
     抑圧された人生を送ってきた少女が、押しつぶされずに自分の力で生きていこうとする戦いの物語。現代のニューヨークに住むティーンエイジャーが主人公なせいか、正統派ジュヴナイルな雰囲気。異世界ものでもあるんだけど。この著者で現実世界とリンクのある話はいまのところこれだけかな。なんかすごく新鮮だったので、いつか日本の街並みや日本人の少年少女たちの学校生活などを乾石さんならどう描写するのか読んでみたいと、少し思いました。

  • 春日武彦『鬱屈精神科医、占いにすがる』(太田出版,2015年12月)
     なんというか、面白いんだけど、とても感想を書きにくい。読み手である私よりずっと功績も地位もある年上の男性が、しかも精神科医の先生が、とつとつと理詰めで内面の弱みや迷いをさらけ出していくことに戸惑いつつページをめくっていると、だんだんと共振が起こってきて、やがて人生のうちのいくつかのほんの一瞬の情景が切り取られ遠い記憶のなかで個人的な意味を持つことへの厳粛な気持ち、みたいなものの印象だけが静かに残った。

  • 王谷晶『探偵小説(ミステリー)には向かない探偵』(集英社オレンジ文庫,2016年4月)
     過去に挫折を味わってなかば開店休業状態にある私立探偵が、謎に包まれた美青年と関わりを持ったことをきっかけに事件に乗り出していくようになる。私は巣鴨って噂に聞くばかりで足を踏み入れたことがない地方出身者なんですが、おそらくかなり実地に即した記述なんだろうなというリアルな感触があって、ちょっと探訪してみたくなるような、私ごときが野次馬根性でうろうろしてはいけないところなのではないかというような。若者ふたりを取り巻くおばあちゃんたちのパワーとテンポのよさも、そこにトボけたズレをもたらす、図体は大きいのにいたいけなまでに世間知らずの青年・絽爛と主人公のやりとりも楽しい。最後はきみらの未来に幸あれと祈りつつ読み終えた。


  • よしながふみ『大奥』第13巻(白泉社,2016年5月)
     内容とは別に、帯のコピーの煽りがちょっと(笑)。社会が大きく変遷していくときには、たとえそれが必然であり正当な流れであったとしても、そこから取りこぼされてしまう者は出てきちゃうよな、みたいなことを考えながら読んでいた。現代にも通ずる問題がさらっと出てきていてぎくりとする。あと、どの時代にも魅力的に描かれる人物が出てきて、そのつど「これがこの物語全体でのベストキャラかも」と思うんだけど、代替わりするとまた別タイプの魅力を持った人物が出てきて、なおかつ史実と要所要所で整合するのすごいな。
Posted at 19:11 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
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