虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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2017年9月に読んだものメモ
  • 温又柔『真ん中の子どもたち』(集英社,2017年7月)
     第157回芥川賞候補作でした。同著者のエッセイ集『台湾生まれ 日本語育ち』はとても面白かったです。事前に見た作品紹介文では、類似するテーマを扱っているようだったので、フィクションとしてはどう料理するのだろうという興味がありました。
     ルーツの半分または全部が台湾や中国にありながら日本で育ち母語は日本語な3人がメインの、中国への短期留学中でのできごと。エッセイで読んだ話とも共通する要素がありつつ、未熟さの残る若者たちがとてもいじらしくかわいらしく青春小説としてさわやか。もともと仲良しだった咪咪(ミーミー)と玲玲(リンリン)の女の子ふたりが留学先で出会う舜哉という男の子の、とらえどころがないようで芯は通っている感じが魅力的。
     ただ、主題的な部分での心の揺さぶられ度は、どうしてもエッセイのほうがファーストインパクトだったこともあって強烈だったなーと、少し寂しく感じてしまったりも。でも将来的に、きっとフィクションならではの強みを活かしてうならせてくれるような新たな作品も読めるんじゃないかなーとか勝手な期待も湧いてきたり。
     あと、芥川賞選考委員のひとりが「日本人の読み手にとっては対岸の火事」と評して話題になった件については、そんな、日本人は日本人にとって身近な話題しか読めないみたいなこと言われても困るわとしか。直接関わりのないテーマに読者を引き込む力の有無ではなく、テーマの選択そのものをマイナス評価するのは納得いかない。この選考委員の昔の作品でめっちゃ好きなやついくつかあって、とても気持ちが複雑。


  • 星野博美『今日はヒョウ柄を着る日』(岩波書店,2017年7月)
     この著者の本を読むのは久々だったので、いまは戸越銀座でご両親と一緒に暮らしているんだなってことも初めて知った。親や自分が歳を重ねていくこと、そのなかで過去に思いを馳せること、目の前のことに観察眼を発揮すること、他人が敢えて突っ込まない部分にこだわっていくこと、などについて、ぼんやりと自分のことも連想しつつ読んでいた。戸越銀座の町のイメージがもうちょっと自分に備わっていればよかったと残念に思った。

  • Shanna Swendson "Criminal Enchantment (Enchanted Universe)" (NLA Digital LLC, 2017年8月)
     <(株)魔法製作所> シリーズの、ガーゴイルのサムを語り手とする番外編、第2弾。今回は、ケイティがまだMSIに入社してない頃の話。街に出回って悪用されている怪しくも微妙にヘボいまじないの出どころを突き止めるため、サムがオーウェンと一緒にがんばる。その過程で、なにやら魔法がぜんぜん効かないっぽい、明らかに地元民じゃない若いお嬢さんを見かけたんだけど……? というわけで、本編第1巻冒頭につづくわけですね。いろいろと、にまにまできて楽しい。

  • 佐藤正午『月の満ち欠け』(岩波書店,2017年4月)
     表面をなぞれば純愛ものとも言えるんだけど、筆致がホラー寄りのような。発端となる関係が決して世紀の大恋愛的なものではない書かれ方なのもあり、そこから超常現象にまで至る感情の強さとのコントラストに恐ろしさを感じさせる。また状況的にも手放しハッピーエンドにはなりようがないので、一貫してすごく不穏な雰囲気が漂う。さらに最初の視点人物が新たに認識した現象を素直に受け入れるか、それとも常識の範疇に押し込めるかは、彼の自由なんだけど、可能性を示唆されてしまえば意識せざるを得ないので、今後の彼の人生も地獄っぽい。そういった堂々巡りの当事者たちが、みんな一見して特殊な運命をたどるようなふうではない、地味に日常生活を送る平凡な人物として描写されているところに怖さが際立つ。第157回直木賞受賞作。

  • 三浦しをん『ぐるぐる♡博物館』(実業之日本社,2017年6月)
     全国のいろんな博物館を訪問して学芸員さんなどのお話も聞いてレポートしてくれてる。三浦さんは、初心者・素人視点での取材本を何冊も出していらっしゃるけど、いつも楽しくユーモラスな表現と、取材対象への敬意や配慮が両立されていて感心する。今回は、よく話題になってるのを見かける有名どころから「そんなテーマの博物館が存在するのか!」みたいなところまで全部で10館が紹介されてるけど、期待を裏切らず、どれも分かりやすく面白くまとめてくれてる。三浦さんご自身が、知らなかったことについて突っ込んだところまできちんと知ろうとする意欲がすごく強いかたなんだろう。自分もそうありたいけど、常日頃いろいろ見逃しがちなのを反省。特に、大阪から東京に移転する予定らしい「ボタンの博物館」は、完全予約制みたいなのでふらっと気軽に立ち寄ることはできないけど、再オープンしたらぜひ行ってみたい。

  • 北大路公子『流されるにもホドがある キミコ流行漂流記』(実業之日本社文庫,2017年6月)
     世間の流行にまったく興味のない著者が流行をテーマに書くというコンセプトのウェブ連載をまとめたもの。第1回冒頭の、流行とは深い水底に座っていると頭上の水面近くをキラキラしながらさっとよぎっていく影、みたいな比喩があまりにも「まさしく!」って感じで素晴らしく、一気に心をつかまれた。そんな北大路さんなので、最初のうちはせっかく買った高機能な体重計を使わなかったり『アナ雪』未見のまま憶測で1本書き上げてしまったりと期待を裏切らない距離の置き方なんだけど、やがてちゃんと北陸へカニを食べに行ったりポケモンを集めたりし始めるので、なんだアグレッシブじゃん! 流行追えてるじゃん! とちょっぴり裏切られたような気持ちになりつつ、やっぱり追えてない部分についてはありがとうありがとうとも思うのだった。


  • よしながふみ『きのう何食べた?』第13巻(講談社,2017年9月)
     山田さんは筧先生への新レシピ提供元レギュラーとして定着したのか。3月の、合同お誕生日メニューは、雛祭りっぽくもある。ついにふたりとも50代。変わらないようで、初期の単行本を改めて見ると、絵柄のうえでもちゃんと歳をとっているのすごい。
Posted at 14:50 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
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