虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
<< August 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
 
ここはなに?
ウェブサイト「虫の居所」の一部です。
管理人ならのが、そのときどきに考えたことや興味を引かれたもの、読んだものなどについて、心のおもむくままに、だらだらと綴るところです。心がおもむかないときは、更新停止しています。
これまでの日々
コメントされた日々
トラックバックされた日々
MOBILE
qrcode
 
2018年4月に読んだものメモ
  • ケン・リュウ編『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』(訳:中原尚哉・他/早川書房,2018年2月/原書:"Invisible Planets: Contemporary Chinese Science Fiction in Translation" Translated and edited by Ken Liu, 2016)
     表題作の英訳版のみ読んだことがあった。あと劉慈欣「円」のもとになった長編『三体』英訳と。日本語だと固有名詞に漢字が使えるので分かりやすくていいですね。英語からの転訳ということだったので、どうなんだろと思っていたけど、中国当局の検閲対策で入れなかった記述を、英訳版で補って作者が本来意図したかたちにした作品もあると知って、考えを改めた。
     7人の作家による13の短編と、収録作家3名によるエッセイ、自らも評価の高いSF作家である編者の序文が入った、バラエティ豊かな構成。どれもアプローチの角度がさまざまで、これまであまり紹介されてなかっただけで中国でのSF文化がいま、すごく楽しいことになっているのだということが垣間見える感じ。英語版のほうの表題作だった郝景芳「見えない惑星」がすごく好みです。子供視点で遠隔操作ロボットがいる生活を描いた夏笳「童童の夏」も印象的。夏笳の3作品はどれもたいへん面白く感じたので、もっと読みたいなー。「円」は、ああ、この回路を作るとこを切り取って短編にしたのか、と。長編のほうを読んだときも(計算対象や登場人物や帰結が違うけど)インパクトが強かった部分でした。


  • 若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社,2017年11月
     あらすじ紹介文を読んだときにはまったく想像もしなかった面白さで、どきどきした。独り暮らしの74歳女性の日々の生活描写と人生振り返り、そしてモノローグが、こんなにも苛烈で饒舌で繊細かつ豪快で、たたみかけてくるような迫力がありつつユーモアと終末を見据えた静かで力強い明るさにも彩られているなんて。しかし作中で多用されている東北弁のリズム感が肝要な気がして、脳内で一文、一文、音読しながら読み進めざるを得ないのだけれど、その東北弁を関西出身者の私は本当は正しく脳内再生できてないはずなので、そこは悔しい。第158回(2017年下半期)芥川賞受賞作。

  • 三浦しをん『広辞苑をつくるひと』(岩波書店,2018年1月〈非売品〉)
     先に白状しておきますが、非売品で、借り物です。『広辞苑 第七版』紙バージョン(上記タイトルからのリンク先はこれにしました)の予約特典だったそうです。こんなの付いてたんだ! 辞書作りに携わる人々を描いた小説もヒットした三浦さんが、『広辞苑 第七版』が完成するまでの語釈の見直し、製函、製本など5つのジャンルの現場を取材。前々からこの著者の「お仕事の裏側レポート」的なノンフィクション作品が、私はとても好きなのです。軽やかな文体と、インタビュー相手への敬意が両立していて。今回も広辞苑の裏側にそれぞれの専門分野でトップクラスのプロ意識を発揮する個人の存在が感じられてとても面白かったです。国語辞典としての内容だけでなく、めちゃくちゃ分厚く重く長持ちして隅々まで作りこまれた本という「モノ」としてのすごみも分かってきた(とはいえ、実際に使うことを考えるとやっぱり自分は電子版がいいなあとも思ってしまうのですが……申し訳ない)。

  • 中島京子『樽とタタン』(新潮社,2018年2月)
     子供の頃、学童保育代わりに毎日通っていた喫茶店で、指定席の「樽」から見た、常連だったりそうでなかったりする大人たち。ちょっと不思議で不可解なやりとりも、幼い心に刻み込まれた遠い記憶の回想という衣をまとえば、本当のことなのかそうでないのかの境界もあいまいに。あえて明快な種明かしをしないのが心憎い。大人たちと、主人公のあいだの、暑苦しく干渉するわけではなく、しかし見守ってはいる距離感もなんかよい。

  • コリン・ジョイス『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(訳:鍛原多恵子/NHK出版新書,2018年1月)
     もとはNHK「ラジオ英会話」テキストに掲載されていたコラム。かつて日本に長く住んでいた英国人の著者が2つの国をフラットに評価し率直かつ気楽に愛を込めて、先入観やイメージで捉えていると見逃すようなことをちょこちょことコメント。日本在住時に、日本で暮らす上で不満な点などに言及すると、日本を嫌っていると短絡的に誤解されることがあったという話には、同じ日本人ながらひどいなと申し訳ない思いがしました。日本人だって日本での生活のなかで愚痴くらい言うよねえ。
     本書で紹介されている1974年の子供向けテレビ番組『Bagpuss』、初めて知ったけど、YouTubeで観られるとあとがきに書いてあったので探してみたら、すっごい可愛かった。こんな手間隙かかりそうなストップモーションアニメーションを毎週放送してたんか。


  • 井上純一『中国嫁日記』第7巻(KADOKAWA,2018年3月)
     書き下ろしとウェブ掲載分の時期がすごいずれてて戸惑う(笑)。月さんのご家族との交流、故郷への訪問、その故郷での子供時代の思い出話などの比重が大きくて、月さんのバックグラウンドがよく分かって興味深い。ここからジンサンと出会うのって、奇跡的よね。

  • あしべゆうほ『クリスタル☆ドラゴン』第28巻(秋田書店,2018年3月)
     もう本当にどっかできちんと時間を取って、全巻まとめ再読しないと。話についていけてなくていろいろ読み損なってる自信がある。しかしグリフィスの苦労人っぷりが不憫。この人、どんどんヤバい感じになってってる故郷に戻ってやっていけるの?

  • 獸木野生『PALM 40 Task V』(新書館,2018年3月)
     これまでの大前提だったジェームスとアンディの超自然的な関係性が方向転換しているとはっきりしたことに衝撃があった。今後これがどういう意味を持ってくるのか……。物語の舞台はいまよりだいぶ前の時代なんだけど、ジェームスが目指す世界はむしろいまの視点で見て現代的な課題であり未来志向でもあり、しかし実はこの時代からすでに、問題はたぶん見る人が見れば社会に表出していたのだなというようなことも考える。「アリス」の存在とかは、SF的でもあるよね。改めて、すごく不思議な感覚がもたらされる作品であると思う。

  • 益田ミリ『今日の人生』(ミシマ社,2017年4月)
     ともすれば見過ごしてしまいがちな日常のちょっとした気持ちの動きの記録、という意味では、ツイッターの140字みたいなものに近いかも(まあツイッターの使われ方も人によってさまざまですけれど)。そういったものをすくいあげて、共感が得られるように表現していくにも技術がいるよねってことを考える。あと、著者ご本人にとってはすごく大事な人であるはずの「彼氏」さんまでもが棒人間として描かれているのが、勝手な投影かもしれないけど照れを感じて微笑ましかった。序盤と終盤のお父さんネタの対比にちょっとしんみり。
Posted at 16:06 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
コメント
コメントする









 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://days.mushi.pepper.jp/trackback/1262116