虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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2018年7月に読んだものメモ
  • ケイト・フォックス『イングリッシュネス 英国人のふるまいのルール』(訳:北條文緒・香川由紀子/みすず書房,2017年11月/原書:Kate Fox "Watching the English: The Hidden Rules of English Behaviour" 2nd Edition, 2004/2014年)
     各種の社会的区分に依存しないイギリス人全般における言動パターンの共通項を抽出しようという試み。会話の潤滑油としてのお天気話や、お約束としての謙遜などは、日本人同士でも「あるある」だよなーと思う一方で、やっぱり外部の者には永遠に分からんなーというような言葉の使い分けなんかもあったりして興味深い。序文のあとテーマ別に論考が進められるんですが、特に総括とかなく突然終わるなーと思ったら、なんとこれ前半部分(アマゾンのカスタマーレビューによれば正確には全体の約3分の1)のみの翻訳なのでした。最初に表紙とかで言っといてくれよそういうことは! 原書の無料サンプルをダウンロードして目次をチェックしてみたら、むしろ翻訳されなかった部分に(私にとって)面白そうな項目があるような気もするし、最後にちゃんと全体のまとめに割いた章もあるみたいなので、余裕があるときに読んでみたいかも。

  • 乾石智子『赤銅の魔女 紐結びの魔道師機戞陛豕創元社,2018年5月)
     最初は短編集のなかの1編の主人公だったのが、まるまる1冊が彼を主役にしている連作短編集が出て、今度はついに長編3部作開幕。著者にとってもリクリエンス(エンス)はよほどお気に入りなんでしょう。実際、結んだ紐で発動する魔術の設定なんてすごく面白いと同時に説得力があるし、エンスの魔道師らしからぬ身体能力や豪快な性格も魅力的。前の短編集では物語がいろんな時代にわたっていたけど、今回は祐筆のリコが存命の頃のお話で嬉しい。お爺さんだけど耄碌とは程遠く口の達者なリコとエンスのコンビ好きです。タイトルロールの魔女も荒んでいるけど強くて美しくてかっこいいぞ。エンスたちに出会って変わり始めたとこで、まだ彼女の思惑の全貌も分からないわけですが、続きが楽しみ。ほかの女性キャラも印象強烈で、今後お話のなかでどういう役割を果たすのか気になる。
     ところで、これを読むにあたって、前作の連作短編集『紐結びの魔道師』も再読したんだけど、リコが亡くなったあとのお話でヒロインポジションにいるニーナに、エンスは今回の長編に出てくる赤銅の魔女の面影を見たりとかしたんだろうか(髪の色が同じ)。


  • いとうせいこう+星野概念『ラブという薬』(リトルモア,2018年2月)
     いとうさんと、いとうさんのカウンセリングに当たっている精神科医の星野さんが、両者の合意のもと診察内容にも触れて公開前提の対談をするという企画。身体の傷を負ったときと同じように心に傷を負ったときにも病院に行こうよっていう導入から、認知行動療法の考え方や、精神科医と心理士の違いなどを紹介してくれたうえで、傾聴や共感というキーワードを経て、最終的には、いまの世の中の不寛容な相互監視の風潮、ネット上のとげとげしい言葉などにも触れ、「現実がきつい」すべての人によりそうような内容になっている。

  • 鴻巣友季子『翻訳ってなんだろう? あの名作を訳してみる』(ちくまプリマー新書,2018年6月)
     取り上げられている作品の傾向がバラバラで、それぞれの押さえるべきポイントも違っていて、あらためて言われると目の前がどんどんひらけていくようでとても面白い。たとえばエドガー・アラン・ポー作品の怖さは(ストーリーそのものだけでなく)文体に宿っているという解説にぞくぞくした。どの章もスリリングです。文芸翻訳を勉強した経験はないのだけれど、「翻訳とは“体を張った読書”」という表現は、ものすごく納得がいく、ような気がして膝を打った(しかし所詮は素人なので気がするだけかも)。あと、昔よく似た形式の別ジャンルのワークショップに参加していたときの空気が脳裏によみがえって、じたばたしたりした(羞恥で)。この本からうかがえる講師としての鴻巣さんは、とっても器が大きく徳が高いかたという感じがします。そして受講者の皆さんも優秀なのだな。

  • 倉数茂『名もなき王国』(ポプラ社,2018年8月)
     8月4日発売予定のものを、期間限定ウェブ公開で読みました。太っ腹PR企画。そしてその後、同じくウェブで公開されていた、本作品の舞台裏についての文章を読んで、もともとは個々の短編として書かれていた複数の物語をまるっとくるみ込んでしまう大枠を作ってつなげてしまうという本作の構成は、編集者のかたによる提案だったことを知りました。なるほど、プロの判断だと、そのほうが一般的な希求力は強くなるんだな、と不思議な感じがしました。というのは、私個人としては、鉱物標本のような粒よりの、幻想的だったり内省的だったりする物語たちは、互いに干渉しあうことなく標本箱にしっかり区切られて並べられているほうが、断然好みだったからです。標本箱のフレームそのものの上面に模様が描けるほどの面積って、必要かなあ、みたいな感想だったのです。
     ただ、大きな枠組みを伴い長編として完成したこの作品はこの作品で、互いに響きあうイメージ、ひとつのお話から別のお話にまたがる伏線など、緻密な計算に基づいて配置されていることがうかがわれ、楽しく翻弄されました。最後に向かって物語が突き進みはじめたときも、もしや欠けてるように見えたピースをきっちり理詰めで嵌めてきちゃうんだろうか、それかえって興醒めになるかも……と心配していましたが、読み終えてみたら脳裏には濃密かつ美しい情景が残りました。しかしやっぱり本音を言えば、初稿から削られたという4本(めっちゃ読みたい!)をも含めた「掌編集」として、第5章を独立させた書籍が欲しいです……。


  • よしながふみ『きのう何食べた?』第14巻(講談社,2018年7月)
     自分は炊飯器のおかゆモードで充分と思っていても、休日の朝食にはケンちゃんの乙女心を満たすためにビジュアル重視して土鍋で白がゆを作ってあげる筧先生すごくないですか!? 猛暑の日に読むと余計に心に響くわあ(って、たぶん作中ではそこまで暑い日じゃない、ふたりとも半袖だけど)。佳代子さんちのお孫さんが来年は小学生だったり、お墓の話題が出てきたり、ほんと容赦なく月日が読者と同時進行ですね。ズッキーニを浅漬けにして和風の一品として食べるって発想はなかった、やってみたい。
Posted at 12:50 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
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