虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
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2018年8月に読んだものメモ
  • 石井遊佳『百年泥』(新潮社,2018年1月)
     流されるように南インドのチェンナイに日本語教師として放り込まれた主人公の女性が、100年に1度の大洪水で出現した泥の山の中から出現するさまざまなものたちを媒介に過去や現在を語る。巻末のプロフィールによれば実際にインドで暮らしているらしい著者が書いた現地生活のこまやかなリアリティが、人を喰ったような大法螺とシームレスにつながって、あれよあれよと違うところへ連れていかれる疾走感。主人公にとっては扱いづらく厄介だけど、未経験なまま体当たりで進める授業を成立させるには不可欠な生徒でもある、ヒネた美青年ディーヴァラージが、どんどん魅力を増していく。第158回(2017年下半期)芥川賞受賞作。

  • 小田嶋隆『上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白』(ミシマ社,2018年3月)
     なんというか、理屈としてはとても分かりやすく順を追って筋が通るように第三者に向けて説明してくださっているのに、心情としてはほとんど追体験できないという読書を久々にした。アルコール依存症、大変。とはいえ、自分が連続飲酒しないのは、あくまでも体質的な制約による面が大きいという自覚はある。最終章でのネットを介したコミュニケーション依存の話でもそうだけど、お酒以外のものに過度にリソース取られて人生削っちゃってる人はいくらでもいるよな。ただ、なににも依存せずに生きていくということは、果たして可能なのだろうか、健康被害や社会的破綻が生じて初めて問題になるだけで、誰しもなにかにバランスを欠いた入れ込みようをしてしまうことはあって、しかし境界を見定めることの難しさは本書にすでに書いてある……とかなんとか考えているうちに、どんどん心がぐるぐるしてくるのであった。

  • ジョー・イデ『IQ』(訳:熊谷千寿/2018年6月,ハヤカワ文庫HM/原書:Joe Ide "IQ" 2016年)
     日系アメリカ人の著者58歳のデビュー作という情報はいったん頭の外に置いたほうがいいかもしれない、ラップとバイオレンスに彩られた、ロサンゼルスの黒人コミュニティを中心に回る物語。しかし主人公の黒人青年アイゼイア(IQ)は、そんな環境にあって古いジャズを好み暴力より知力で問題解決に当たる物静かなシャーロック・ホームズ型の探偵というのが、こちらのステレオタイプなイメージを崩してくれる。ワトソンっぽいポジションに入るギャング上がりの元同居人との、相棒と言っていいのかすら分からない殺伐とした腐れ縁だけど一蓮托生な過去を共有する複雑な距離感も面白い。ある出来事さえなければ、その頭脳を活かして裏社会とは無縁の人生を歩んでいたかもしれないIQの、現在のスタンスの根底にある倫理感が、その出来事によって補強されているという皮肉。短いエピローグは最初、「いまさらだよね」みたいなどうしようもない話をぽーんと出して諸行無常感を余韻として残す文学的構成なのかと思ってしまったんだけど、巻末解説を読んでそうではないと知り、次の巻が楽しみになった。


  • 白井恵理子『STOP劉備くん!! リターンズ!』第2巻(潮出版社,2018年5月)
     第1巻が出たとき、連載開始から単行本刊行までずいぶんかかったなと思ってたら、今度は続きが2ヶ月で出てるじゃないか。気付いてなかったぜ! 夏侯惇が「とんとん」って呼ばれるの可愛くない!? 可愛くない!? 諸葛瑾と馬超の組み合わせ新鮮。個人的に、白井先生が雑兵Aのこと「なんでも中途半端にできる」とコメントしてたの、ちょっと意外。なんでもできる超有能兵で、ときおりの失敗は周瑜をおちょくるためってイメージだった。そうか本気で偽りなく中途半端なんだ!〔初出『Webコミックトム』2015年7月〜2016年5月〕

  • 白井恵理子『STOP劉備くん!! リターンズ!』第3巻(潮出版社,2018年7月)
     劉備の玄ちゃん並みに孫子の兵法とか知らないので勉強になるわあ。そして第2巻の感想メモでは瑾さんとの組み合わせに受けてたけど、やっぱり馬超は姜維と一緒のときがいちばん好きかも。姜維くんみたいに「愚者がまた愚考を!」って私も誰かに言ってみたい(やめなさい)。あとがきで、白井先生が認知症のご家族を介護なさっていたと知り、そんな大変ななかで、のーてんきな武将たちの漫画を描けていた精神力に感服する思いです。あと表紙の剣舞する周瑜たんかっこいい。一枚絵のキャラの決めポーズがいつもすごく好き。〔初出『Webコミックトム』2016年6月〜2017年4月〕

  • 瀧波ユカリ『ありがとうって 言えたなら』(文藝春秋,2018年3月)
     瀧波さんのお母さまの末期癌が分かってからの経緯を描いた作品で、読むとつらくなるんじゃないかなって覚悟していたんですが、とにかくお姉さまとともに、体力も感情も振り絞ってやり切った感のある看取りで、胸が痛くなると同時にこういう言い方は失礼かもしれないけど、さわやかささえある読後感であった。お母さまの個性がとても強くて、きれいごとでない話も率直に語られているにもかかわらず、全部ひっくるめて人間味があって魅力的なかただったことが分かるようになっているのが、愛だなあって。〔初出『CREA WEB コミックエッセイルーム』2016年5月〜2017年10月〕
Posted at 13:26 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
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