虫のいい日々

あぶはち取らずと言われても、極楽とんぼで過ごしたい。
<< August 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
 
ここはなに?
ウェブサイト「虫の居所」の一部です。
管理人ならのが、そのときどきに考えたことや興味を引かれたもの、読んだものなどについて、心のおもむくままに、だらだらと綴るところです。心がおもむかないときは、更新停止しています。
これまでの日々
コメントされた日々
トラックバックされた日々
MOBILE
qrcode
 
2018年12月に読んだものメモ
2019年もよろしくお願い申し上げます。


  • 多和田葉子『穴あきエフの初恋祭り』(文藝春秋,2018年10月)
     自分がいる「いま、ここ」に、うまく馴染めていなくて、ずれた位相のとこで暮らしている登場人物の視点で、主観的に入ってくる外界認識を言葉に置き換えて、その言葉でジャグリングをしているような短編集。私には説明が難しいが、たしかに存在する面白さ。

  • 三浦しをん『ののはな通信』(角川書店,2018年5月)
     足掛け27年にわたる、「のの」と「はな」の書簡集(後半はメール)。同級生として毎日のように顔を合わせていた多感な少女期の文通から、それぞれの道が分かれて直接会うことはない大人の女性同士としてのやりとりまで。ふたりのうち、むしろ無邪気なお嬢さま気質と思われた「はな」のほうが、最終的にその核の部分にあった強靭さを発現させて苛烈な選択に向かい、「のの」は「のの」で真摯にプロフェッショナルに自分の力で人生を歩む。思春期のごく短い期間に最高に純粋で曇りない輝くような恋愛を共有したふたりの、その後おそらく死ぬまで上書きされることのない、強烈で濃密な精神的つながりと、それでもともにあることはできない/しないやるせなさ。物語の始まりのところ、1通目の少女時代のお手紙のなかで『日出処の天子』最終回への言及があるのは、最後まで読むと暗示的なものを感じて、なるほどと思う。

  • 呉明益『自転車泥棒』(訳:天野健太郎/文藝春秋,2018年11月/原書:吳明益『單車失竊記 The Stolen Bicycle』,麥田出版社,2015年7月)
     父親が自転車とともに失踪したことをきっかけに古いモデルの自転車を収集し復元するマニアとなった主人公のもとに、20年の時を経てその父が乗っていた自転車が現れる。家族の過去と現在、自転車を媒介に知り合った人々の記憶、戦時下の凄まじい体験、蝶に関する思い出、ゾウがつなぐ縁……さまざまな物語が詳細だけど淡々とした筆致で、しかし時にがつんと鮮烈なフレーズを伴い、次々と繰り出され展開する。個人的な視点で綴られつつも、台湾の複雑な歴史的・民族的背景がぶわっと浮き上がってくる。そして最後には静謐な美しいものを堪能したという心持ちに。
     ここから読書感想じゃないんですけど、翻訳をなさった天野健太郎さんが、本書の刊行直後の11月12日に急逝されたという報道があり、ご病気だったことも存じ上げなかったので、とても驚きました。こういった読み応えのある小説から絵本まで幅広く手がけておられて、直接やりとりさせていただいたことはなかったけど、私がツイッターに書いた拙い読書感想メモに「いいね」をつけてくださって「ひええ、お目汚しを」と、おののいたりしたこともありました。これからも台湾を中心に中国語圏の面白い本をいっぱい紹介してくださるものだと思い込んでいたので、とても残念です。ご冥福をお祈りします。


  • 島本理生『ファーストラヴ』(文藝春秋,2018年5月)
     父親殺害で逮捕された女子大生と面会を重ねる臨床心理士の女性が主人公。殺人者の心理を探っていくはずが、自身のなかにあった問題とも向き合うことになっていく。異性であっても恋愛とは違う部分で同じ心を分かち合う同志のような存在と出会うのって奇跡的なことかもしれないけど、その同じ心というのが歪みを含んでいて傷つけあう結果になり、しかしそこをすべて包み込んで健やかで穏やかな方向に引っ張ってくれる別個の存在もいて、というの希望を感じる構図だなー、と思ったり。第159回(2018年上半期)直木賞受賞作。
Posted at 13:22 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark
コメント
コメントする









 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://days.mushi.pepper.jp/trackback/1262124