2020年5月に読んだものメモ

  • 陸秋槎『雪が白いとき、かつそのときに限り』(訳:稲村文吾/早川書房,2019年10月/原書:陆秋槎《当且仅当雪是白的》新星出版社,2017年3月)
     共学の高校が舞台だけど、メインになるのは少女たち。それと、同じ学校の卒業生でもある、まだ若い学校図書館の司書の先生。パズラーなので、きちんと手掛かりが提示され、それに応じた謎解きがおこなわれる。でも、印象的なのは、この年頃の少女が抱く、未来への不安、自分という存在の重さへの疑念、とんがった心もとなさ。平凡であることに対する忌避と、平凡であることに対する希求。中国の学園生活の、日本と似ていそうなところ、違ってそうなところに着目して想像をめぐらせながら読むのも面白い。

  • ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』(訳:友廣純/早川書房,2020年3月/原書:Delia Owens "Where the Crawdads Sing" 2018年)
     1969年のノースカロライナ州で、古い火の見櫓から落ちたと思われる死体が発見されたのを起点に、亡くなった男性と一時期かかわりがあったひとりの女性の数奇な半生の振り返りと、男の死に関する警察の捜査が進むさまが交互に語られ、やがてふたつの時間が合流する。この、だんだんと作中時間の差が狭まっていくところに、サスペンスを感じる。家族にも見捨てられ、たったひとり湿地の小屋で暮らしてきた少女が、わずかな出会いから生きるすべを吸収し、向学心を開花させて本来持っていた知性を羽ばたかせ、湿地の自然とともに、たくましく魅力的な女性として生き抜いていく過程に心惹かれる。


  • 那洲雪絵『ここはグリーン・ウッド』(白泉社・マンガPark版/底本:花とゆめコミックス,1987年1月〜1991年10月〔全11巻〕)
     前々から名作としてたびたびタイトルが挙がっているのを見かけていたけど読んだことなかったのが、出版社のアプリで期間限定無料公開されていたので。初めて読むのに、なんだか懐かしく感じたのは、絵柄とテンポのせいか。
     男子校の寮を舞台に、個性的な男の子たちが繰り広げるてんやわんや。あれもこれもアリのてんこもりでさまざまな趣向のエピソードが。
     10代の子たちが家族のもとを離れ、限られた期間を限られた空間で同世代の子たちとともに過ごす。現実にはけっこう大変だろうなとは思いつつ、私もティーンの頃は、親元を離れてみんなでわいわい暮らすって状況に、ちょっとロマンを感じてたよな。こういう漫画は、あの頃読んでいたら、そのロマンを求める心を満たしてくれたのかもしれない。
     それぞれになんらかのかたちで、ほかから突出した人生を歩んでいる、そして自分の居場所を模索している、大人になりかけの発展途上の子供たち。最終回のあと、この子たちは、どんなふうに生きていったんだろうな、と思いを馳せずにはいられない。高校の3年間なんて、あまりにも、人生全体のなかで見ると短いんだけど、でも、あの頃の3年間って、「濃い」よねえ。たぶん誰にとっても、あの時期は、1年1年が、「濃い」。で、少女がメインターゲットである掲載誌において敢えて舞台を「男子寮」にすることで、読む側にとってはほどよく生々しさが薄れていたのかもしれないな、とも。
     いま読むと、ちょこちょこ引っかかる表現もあって、30年前はまだこれがギャグネタとして茶化していいものだったんだな、などと改めて時代の流れを感じるところもあったりしたけど、悪ノリすることもありつつ押しなべて基本は善良なメインキャラクターたちを愛おしく思えて、楽しかったです。


  • 由貴香織里『天使禁猟区』(白泉社・マンガPark版/底本:花とゆめコミックス,1995年2月〜2001年2月〔全20巻〕)
     これも期間限定で無料公開されてたやつ。やはりちょくちょくタイトルだけは聞くんだけど、読んだことなかった。厨2系オタク女子の基礎教養をようやく履修できた、みたいな達成感がありました。さまざまな同人作品で見かけまくった要素が、これでもか、これでもか、と波状攻撃で来た。貫禄を感じた。そして絵が美しい。グロテスクなものですら描線が美しい。

  • 羅川真里茂『赤ちゃんと僕』(白泉社・マンガPark版/底本:花とゆめコミックス,1992年3月〜1997年9月〔全18巻〕)
     さらにこれも期間限定無料公開のやつです。この機に乗じて長編少女漫画をどんどん読んだぜ。小学5年生のときにお母さんを事故で亡くし、仕事で忙しいお父さんをサポートして、歳の離れた弟の面倒を見なければならなくなった男の子が主人公。大人になってから読むと、小学生がしょっちゅう独りで赤ちゃんの命に対する全責任を負うことになる状態を放置するなんて、周囲の大人はそれでいいのかと、もどかしい気持ちにもなるんだけど(とはいえ、じゃあどうすればっていうのもなかなか難しく、結局家庭内の自助努力でなんとかできるならなんとかするしかない、というのがいまでも現実なのかも……30年近く前ならなおさら、経済力が落ちないこと前提で考えられていた父子家庭に対する公的支援はいまよりさらに薄かっただろうし、お父さん仕事削れないよねえ)、とにかくこの子が、すごーく頑張る。時に癇癪を起こし、時に周囲を羨みながらも、とにかくプレッシャーに耐えて頑張るし、弟を心の底から全力で可愛がる。そして彼の周りのほかの小学生たちも、さまざまな家庭に育ち、さまざまな事情を抱えているということが、作者の視点でそこに優劣が付けられたりすることなく、活き活きとした小学生ライフのなかで自然にフラットに語られるのがよかった。
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