アラン・ベネット『やんごとなき読者』

やんごとなき読者
(訳:市川恵里/白水社,2009年3月/
原書Alan Bennett "The Uncommon Reader" 2007)

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ある日偶然、宮殿の裏手に来ていた移動図書館の車に遭遇したイギリス女王陛下は、儀礼的に本を借りたことがきっかけで、急速に「読書」に目覚めてしまいます。しかしながら、女王の周囲の人々は、決してそれを歓迎はしないのでした……。

まずは、女王陛下を小説の主人公にしちゃえる国なんだイギリス! というのが改めてすごいよなあと(笑)。

そして、読書にのめりこんだ女王さまの周囲からの浮きっぷりや、冷遇されっぷりがおそれ多くもヒトゴトとは思えず。「本ばっかり読んでないで勉強しなさい」とか「本ばっかり読んでいないでもっと健全に遊びなさい」とか言われまくったり、本好きじゃないお友達にうっかり本について熱く語ってしまって気まずい雰囲気になったりしていた子供の頃を思い出して落涙しそうになりました。女王陛下はお歳を召しても本を読んでるだけで「かわいそうな人」っぽく言われて大層お気の毒でいらっしゃいます。「読まない人」からすると「読む人」はそんなにヘンなのでしょうか。ヘンなのでしょうね。

その一方で、本を読む面白さを実感するときの高揚感とか、本を通じて視点の転換ができるようになって世界が広がっていく感じとか、現実とフィクションがフィードバックし合うわくわく感とか……とにかく速攻性の実利的な情報を得るためでなく単純に「読むこと」の楽しさを端的に表すフレーズ満載なのが、こちらも読んでて嬉しかったりもします。作中の女王の、読んだものに対する反応が、とても素直でおそれながら微笑ましく、また徐々にレベルアップしていくのも、なんだかリアル。

巻末の解説文(新井潤美)の、イギリスの上流階級における「知性」に関する考察も大変興味深く読みました。
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    竹宮ゆゆこ『とらドラ!』

    とらドラ!1
    (電撃文庫,2006年3月)
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    方々で評判がよくてずっと気になっていたのですが、読みそびれているうちにアニメ化されちゃって、そしたら今度はアニメになったから手を出したみたいになるのがなんかイヤだなあとか自意識過剰なことを思ってしまっていました。いつのまにかそのアニメも終わって、結局アニメ版は最初の2話と最終話だけしか観ておらず、やっぱりその「あいだ」の話も気になるよなあというわけで、いまさらながらまずは最初の巻を読んでみることにした次第です。

    この第1巻の内容が、アニメ版の最初の2話にほぼ完全に対応していたことに、少し驚きました。細かいところは違うものの、アニメの2回分で、かなり忠実に1冊分のストーリーを映像化していたのですね。えーと、小説は全10巻で、アニメはたしか、全25回? ペース配分としては妥当なのか。

    料理と掃除が特技で気の優しい常識人な男の子なのに、父親ゆずりの人相の悪さで勝手に周囲から恐れられている高須竜児と、小柄で華奢な美少女なのに、その気性の荒さと暴力性により「手乗りタイガー」の異名を持つ逢坂大河。

    タイトルがタイトル(虎と竜)だし、そもそもアニメ版の最終回を観ちゃってるので、誰と誰がくっつくかなんてことは最初から分かりきっているラブコメなわけですが、この第1巻の時点では、それぞれが別々に、決して多数派ではない環境のもと、ままならぬ恋をしていて、協力体制をとるうちに、お互いを「並び立つもの」と認識していきます。

    アニメを数回分のみとはいえ先に観てしまっていたので、どうしてもアニメの映像で再現しながら読んでしまうのですが、終盤の深夜にふたりで電柱を攻撃するシーンの、「やりきれなさ」をぶつけるモノローグにはぐっと来ました。こういうのは文字表現の強みだなあ。

    だって竜児には敵がいる。人生の道筋に置かれた石のようなものの存在を、竜児は確かに感じている。(中略)コンプレックス、という名を持つかもしれない。運命とか、生まれつきとか、環境とか、そういうふうにも呼ばれるかもしれない。思春期特有の自意識、とか、自分じゃどうにもできんこと、とか、もっといろんな名前があるかもしれない。でもとにかく、そいつらには殴ったり蹴ったりできる姿がなくて、そして多分、そんな実体のない奴とまだまだこの先ずっと、ずーっと闘い続けなければならないのだ。こんなふうに電柱にでも蹴りを入れてやらなければ、一生死ぬまで発散できない。

    何がいちばん切なかったかというと、この時点で竜児が、自分のなかにあるもやもやの一部を、大人からは「思春期特有の」と言われちゃうかもしれないものとして認識していることでした。その、若いなりに俯瞰的になってしまったものの見方が、ある意味「諦念」入っている……というか、この子の場合、置かれた状況から、自然に入らざるを得ないんだよなあという。そこを思うと、すごく切なくいじらしい気がする、なんて。
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      森見登美彦『恋文の技術』

      恋文の技術
      (ポプラ社,2009年3月)
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      書簡集。最初から最後までお手紙だけで構成されてます。

      京都にある大学の研究室から能登半島にある実験所に飛ばされてクラゲ研究をしている院生の守田くんが、京都時代の先輩や後輩、家庭教師をしたいた頃の生徒、OBで「偏屈作家」の森見登美彦氏、実の妹さんなどに、ぐだぐだとした日常を綴った手紙を書きまくっています。書きまくっているのですが、ひとりだけ、どうしても手紙を書けずにいる相手が……。

      文通の「やりとり」ではなく、最終章を除いては一貫して守田くん側だけの手紙ばかりが続いているのですが、読み進むうちにだんだんと登場人物の相関関係が見えてきます。こっちの人とのやりとりに出てくる人と、あっちの人とのやりとりに出てくる人が、じつは同一人物だったりとか……ていうか、すんごい狭い世間に生きてますな、この人たち(笑)。楽しそうだけど!

      最後の最後に、ついに書きあげた「恋文」にやられました。やっぱりぐだぐだな日々をぐだぐだなままに延々と綴っているんだけど、とても真摯でさわやかという。
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        桜庭一樹『ファミリーポートレイト』

        ファミリーポートレイト
        (講談社,2008年11月)
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        母マコとその娘コマコがふたりだけで逃げて逃げて逃げまくる「第一部」と、マコに置いていかれたコマコのその後が語られる「第二部」に分かれています。一貫して、コマコの一人称。

        主人公コマコの非常に特異な生い立ちは、特異すぎて時にどこか歪んだ滑稽さを感じさせるほどなのですが、このリアリティのなさで、余計にコマコの精神状態の異様さが引き立っている気がします。のちにコマコが語り始めるシュールな物語との境目がゆらぐような。

        口から言葉を発することのなかった幼い頃のコマコが、逃亡の旅がつづくあいだ、常に固執する「本」や「物語」。一人になったコマコが自分の中から何かを絞り出すようにして紡いでいく「物語」。

        本書の核になっているのは、ほかの桜庭作品でもちょくちょく顕著な母と子の濃密な世界なんだろうとは思うのですが、その一方で、小説家としての桜庭さんの、「物語を読むこと」そして「自らが物語ること」への信仰告白に近いものを感じたことでした。
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          高里椎奈『小説レッドクリフ』下

          小説レッドクリフ(下)
          (脚本:ジョン・ウー,カン・チャン,コー・ジェン,シン・ハーユ/講談社,2009年3月)
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          映画ノベライズ。上巻が映画「Part I」の内容にほぼ対応しており、こちらの下巻は「Part II」に対応。

          上巻にも増して、できうるかぎり女性キャラ視点で話を進めようとしている感じ。ストーリーの都合上、女性キャラが誰も登場しないシーンもあるんだけど。

          映画では具体的に語られることのなかった小喬の少女時代のエピソードを入れて、曹操との対決シーンに至るまでのバックグラウンドに厚みを出しています。あと、映画では(たぶん尺の都合もあって)ほとんど「捨てキャラ」扱いになっていた麗姫視点での心の変遷が描かれていたのも、ちょっとよかった。

          それにしても映画はどう見たって周瑜が主役でしたが、このノベライズ版は、通して読むと完全に小喬が主役になってましたね。

          個人的には、映画ですごく好きだった孫兄妹の仲良し描写が映画版より微妙に増えていたのが嬉しかった。
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            本多孝好『チェーン・ポイズン』

            チェーン・ポイズン
            (講談社,2008年11月)
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            この小説には、語り手がふたりいます。

            ひとりは、30代半ばの独身女性。無意味に思える日々に疲れて、もう死にたいとつぶやいたそのとき、見知らぬ人物から「あと1年待て」と声をかけられる。1年頑張れば、ご褒美として眠るように楽に死ねる手段を差し上げます、と。

            もうひとりは、週刊誌の記者。気になる共通点のある3つの自殺事件を調べています。その共通点とは、自殺者はいずれも入手が難しい毒物を飲んで死んでいること、そして自殺の原因となる事柄が生じた時点から1年ほどが経過した頃になってから死んでいること。最後に亡くなった30代の独身女性の周辺から何かがつかめるのではと、取材をはじめますが……。

            死ぬと決めた女性のその後の1年間と、自殺の謎を追う記者の足取りが、それぞれの一人称で交互に語られます。

            女性は、衝動的に会社を辞めたあと偶然通りかかった児童養護施設で、なりゆきからボランディアに参加することになります。そしてそこでのさまざまな出来事を通じて無気力状態を脱し、最後には生きることに未練さえ抱くようになります。この過程は、読んでてとても嬉しくなります。ただ皮肉にも、そのときにはもうこの女性にとって、周囲の状況が「死ぬしかない」というものに……。ええええ、そんなー(涙)。

            そのような女性の側の生活が詳しく綴られているのを読んだ直後に、記者の側で、いくら取材を重ねても亡くなった女性の実態が見えてこないともどかしく思うさまを読むと、読み手である私は、いつになったらこの記者は実際に起こったことを知るのだろう……と、さらにもどかしい気持ちになってしまいます。

            記者が取材で得た情報から導き出した推論と、女性側で語られる事情が微妙に食い違っていたりすると、この違和感はどこで解消されるのだろう、どうして記者の目にはそういうふうに見えてしまうんだろうと、首をひねったり。

            ところが。その違和感が解きほぐされたときには、読み手もまた目くらましをされていたことが判明するのです。ああ、そうかー、それでかー。そういう書き方をする人だって、ぜんぜん知らなかったんだよー。

            この記者は、いい人だなあ。どぎつい週刊誌広告が目に入ったときにも、記事の向こう側には、締め切りに追われながらも思考停止することなくせいいっぱい誠実にお仕事してる、こういう人だっているんだろうと想像するだけで、なんだかホッとするような。
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              Cassandra Clare "City of Ashes (The Mortal Instruments: Book Two)"

              City of Ashes (Mortal Instruments)
              (Walker Books,ペーパーバック2008年7月/ハードカバー2008年3月)
              《リンク先はMcElderry;Reprint版,2009年3月》

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              2007年に商業デビューした作家さんの2冊目の本。3部作の真ん中の巻です。最終巻もハードカバーは今年の3月に刊行されているのですが、7月にペーパーバック版が出るのでそれを待っているところです(しかし英語圏でハードカバー作品がペーパーバックになるまでの期間の目安って、さっぱり分からん……これは4ヶ月で出ちゃうのか)。

              デビューする前から、通常のペーパーバックより大判で各々400ページ超の長編3作を続けざまに出版することが決まっていたって、けっこうすごいことなんじゃないかなあ? しかしながら、このクレアさんの場合はちょっと特殊で、かつてネット上で発表していた、とある児童文学シリーズのファンフィクション(二次創作小説)がものすごい人気をはくしていたかたなのです。

              最初の本が出版されたときなんて、発売日のずっと前から、Amazon.comでは期待に満ちたカスタマー・レビューがたくさん付いていたもんなあ。鳴物入りのデビューでした。

              さて。第1巻 "City of Bones"を読んだときには、余裕がなくてそっけないコメントしか書けなかったので、改めてここまで読んだシリーズ全体の感想というかたちで書いてみようと思います。

              世界観は、敢えて言えばナンシー・A・コリンズの『ミッドナイト・ブルー』に始まる「ソーニャ・ブルー」シリーズ(ハヤカワ文庫FT)にちょっと近いかな? 普通の人間たちの目には見えないところで、デーモンと、それを狩る特殊な能力を持つ人間“シャドウハンター”たち、そして中立している人外のものたち(ヴァンパイア、人狼など)が、戦いや駆け引きを繰り広げている、という。ニューヨークの夜の世界を舞台とした、血みどろ描写もけっこうありのダークなアーバン・ファンタジーです。

              ヒロインのクラリー(クラリッサ)は、ニューヨークのアパートで母親とふたり暮らししている平凡な(と、少なくとも自分では思っている)15歳の女の子。母親がやたらと過保護なことを除けば、ごくありふれた毎日を送っていました。しかし幼なじみの少年サイモンと一緒にティーンエイジャーの入場OKなナイトクラブに繰り出した夏休み中のある晩を境にその生活は一変します。

              人間離れした少年少女たちとの邂逅。何者かにさらわれた母。得体の知れないモンスターによる襲撃。ナイトクラブで出会った不思議な少年たちの一人、ジェイスによって間一髪のところで救出されたクラリーは、彼の仲間である“シャドウハンター”たちの根城に連れてゆかれ、そのまま普通の人間たちのあずかり知らぬところで連綿と続いてきた戦いに巻き込まれることになります。

              第1巻では、クラリーの出自の秘密、隠された秘宝の探索、そしてかつてはカリスマ的なシャドウハンターであったが現在は反旗を翻して大いなる敵となっているヴァレンタインとの闘いなどなどが語られる傍ら、クラリーとジェイスが徐々に惹かれ合っていくさまが描かれます。しかしようやく彼らが気持ちを通わせたと思った直後に誤解によるすれ違いが生じ、そのまま物語はクライマックスになだれ込んで、本筋での決着はつくものの、ふたりが決して恋人同士にはなれない外部要因が判明。この辺はすごくもどかしく、消化不良な気持ちのまま次巻を待つことに。

              そしてこの第2巻。敵にさらわれていたクラリーの母親の身柄を奪還することに成功したものの、意識不明の状態が続いており、なすすべがない、というところから話が始まります。

              本作では、デーモンを操る手段を手に入れ力を増したヴァレンタインが、さらに力を得るべくおこなおうとしている儀式のための血なまぐさい所業と、それを阻止しなければならないシャドウハンターたちの攻防を縦糸にして、クラリーとジェイスとサイモンの微妙な三角関係、前作で判明した事実のためにシャドウハンターたちのなかで複雑な立場に置かれたジェイスの孤独、サイモンのおぞましい受難、クラリーの秘められていた能力の開花などの横糸が織り込まれています。

              1巻、2巻ともに、展開はスピーディで、絵的にインパクトのあるシーンの連続。文章のリーダビリティが高いし、キャラ立ちも鮮やか。特にミステリアスなブロンドの少年、ジェイスが魅力的です。物心ついた頃から戦うための訓練を受けてきた生粋の戦士だけど、ふとした拍子に年相応のナイーヴさや繊細さが垣間見えたり、いつも斜に構えて感情をおもてに出さず皮肉っぽいことばかり言ってるくせに、たまにクラリーの前では激情を見せたりするあたりにグッと来ます。

              うん、このジェイスのセリフ回しはとてもよい。ピンチに陥っても精神的に追い詰められても、とりあえず持ち前の頭の回転の速さを駆使してへらず口を叩いてしまう彼の存在があるおかげで、シリアスなシーンにも、ちょっと歪んだユーモアが盛り込まれていて。だけどそうやって傷ついても虚勢を張ってしまう彼が、どこか痛々しくて切なくて。

              ……ただ、なあ。
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                相原茂『話すための中国語 北京七泊八日の旅』

                話すための中国語―北京七泊八日の旅 (PHP新書)
                (PHP新書,2002年7月)
                【Amazon.co.jp】

                大学で中国語を取っている女子大生ふたりが北京旅行してみたという設定のストーリーに沿って、さまざまなシチュエーションで使える会話文の実例を挙げているというもの。

                私も去年から中国語教室に通い始めたものの、なかなか上達しないのでちょくちょくめげがちなのですが、わりと最初の頃に習うようなシンプルな構文でも、応用してけっこういろんな場面に対応できちゃうもんなんだなと、ちょっと勇気づけられて微妙に(微妙にかよ)勉強意欲が刺激されました。

                とても印象的だったのが、旅の終わりに近づいて、ちょっと高級なレストランに入ってみたという設定の章での解説。

                 食事が済んで勘定を終え、帰りしなに日本人は「とてもおいしかったわ、ごちそうさま」などと言いたい衝動にかられるようです。
                (中略)
                 こういうセリフはとてもヘンなのです。何だか品がないというか、人間の品性が落ちます。中国でこういうことを言うと、食べることにとてもこだわっているように思われます。
                (中略)
                 いいお店を教えてもらいましたとか、あなたにまたご馳走になってしまったとか、次は私に招待させてくださいとか、楽しい時間を過ごせたとか、まあお礼の言葉はいろいろあります。ところが、日本人はよりによって「料理がおいしかった」と言うので困ります。
                〔p.191-192〕

                そうかー、そういうもんなのかー。私は日本人なので、やはり誘った相手に「おいしかった」と言われたら、よかったーと胸を撫でおろして安堵とともに嬉しく思ってしまうのですが、中国人相手だとダメなのね。食べた「もの」が美味であったという感想は、それをご馳走してくれた「ひと」とは無関係という捉え方なのですね。

                こういうふうな、ちょっとした価値観の差異で、知らず知らずのうちに、善意がすれ違ってしまったりするんだろうなあ。
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                  平野恵理子『和ごころ暮らし』

                  平野恵理子『和ごころ暮らし』
                  (ちくま文庫,2006年7月/親本:『日本の暮らしと小物たち』ブロンズ新社1993年11月)
                  【Amazon.co.jp】

                  この手の「暮らし」ネタの本を手に取りたくなるときって大概、「心が疲れている」ときとニアリィイコールだよなあ、私の場合……と、あとになって思ったりもするのですが。

                  もともとは16年も前の本ですが、あまり意識することなく読了しました。四季折々の「和ごころ」のある小物や食べ物、習慣などについて綴った平易で短い文章と細やかなイラストがたくさん収められています。

                  洋風化されているようでも、実はいまどきだって、暮らしのあちこちに、ちょこちょこと和風なものが残っているよなあ、ということを改めて思いました。徐々になくなっていくものもあるんだけど、今後も、完全になくなるってことはないんじゃないかなあ。こうやって、「和ごころ」を素敵と思うひとがいるかぎり。
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                    万城目学『プリンセス・トヨトミ』

                    プリンセス・トヨトミ
                    (文藝春秋,2009年3月)
                    【Amazon.co.jp】

                    ホルモー(京都)、鹿男(奈良)と来て、今度は大阪が舞台です。いままでの作品も、「長年にわたって知る人だけが知る、けれど表面的には存在しないことになっている秘密」についての、とてつもない大ボラ話でしたが、今回はいちばんスケールがでかい。なんせ、知る人だけが知る、の「知る人」の数が半端じゃありません。また、隠されていた「秘密」の性質が、なかなか痛快。

                    あとはもう、何を書いてもネタバレになりそうで、すごく感想を書きにくいのですが。登場人物それぞれが別々に抱いていた思惑と行動と背景がからみあって、あれよあれよというまに意図せぬおおごとになっていく過程がめまぐるしく、一緒になって目を白黒させながら読んでいました。

                    主役ポジションにいる人たちのうち、中学生コンビの片方の、ドラマを盛り上げる要素ではあるかもしれないけどストーリーの核の部分にとってはとりたてて必然性のないように思えたちょっと特殊な設定は、なんなんだろうなと思っていたら、最後の最後で、活きてきたので、そうかあ、と。今回は、秘密を知る人たちのあいだでも、すごく大きな分断があるのですが、この子の立ち位置のおかげで、両方を俯瞰することができるのですね。
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